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令和4年度 総務委員会行政視察報告

期日

令和4年6月29日(水曜日)~7月1日​(金曜日)

視察委員

岡崎源太朗(委員長)、檜垣美良(副委員長)、奥田和夫、神田隆彦、片岡慶行、岩原昇​

視察都市

月  日 視 察 先 調 査 事 項
 
6月29日(水曜日) 石川県金沢市

自主防災の取組について

6月30日(木曜日) 愛知県豊橋市
7月1日(金曜日) 兵庫県姫路市

視察目的

 呉市の自主防災活動は、災害等が多い地域では積極的に自主防災活動などの取組を行っているが、災害等が少ない地域では、自主防災に対する意識が乏しく温度差がある状況である。近年発生している災害が大規模化・多様化していることから、改めて平常時の備えから災害時の活動において、市民が自ら考え対応できる体制や防災に対する意識の啓発を進めることが必要と感じており、他市の自主防災の取組を参考とするため、視察を行った。

石川県金沢市

(1)調査内容

 金沢市では、防災に対する意識向上への取組として、各地域の自主防災組織が訓練の企画立案を行い、市内3会場で市民防災訓練を開催している。訓練内容は、各地域で災害を想定し、各町会ごとに避難所までの経路を確認する「まちなか訓練」や、避難所の設置・運営訓練を行っており、自主防災組織が内容を計画し、各地域に即した訓練で地域防災力の向上に努めている。自主防災組織は町会単位で活動しており、地域で子どもを育てる、地域で自主的に活動をすることが昔から地域に根づいていることや町会への加入率が100%に近いことから金沢市民の地域防災意識の高さが伺えた。
 防災に対する意識向上への取組の一つとして、防災士の育成を行っており、石川県が開催する自主防災組織リーダー育成講座により、地域の自主防災組織から推薦のあった方を対象に、石川県と金沢市で受講料を2分の1ずつ負担する取組や、防災資機材等に係る補助金において、地域の防災計画を策定した場合は、補助率が上がるといったインセンティブの導入を実施している。
 また、金沢市域の防災士で「金沢コミュニティ防災士ネットワーク」を立ち上げ、防災士、地域間の連携推進を行っており、活動方法が分からない防災士に対してもネットワークに所属する防災士が協力できる体制で各地域の防災力強化につながる仕組みを構築している。
 避難所の環境整備では、避難所に指定されている小中学校の体育館にストーブ、扇風機、マンホールトイレの配備に加え、新型コロナウイルス感染予防対策を講じた避難所運営ができるように、医療用ガウン、簡易テント、簡易間仕切り、折り畳み式簡易ベッド等の配備を進めている。
 避難所の協力体制については、避難所の運営を自主防災組織が主体となって行っており、職員は、避難所の開設、運営、災害対策本部との連絡や調整を行っている。市は地域の自主防災組織から依頼があれば避難所の運営に係る研修を行うなど、市と自主防災組織等が強い互助関係にある印象を受けた。

(2)質疑応答

 市民の防災意識向上への取組、自主防災組織に対する防災資機材等整備費の補助、防災士の活動や地域間の連携、避難所の運営・設備環境等について質疑を行った。

(3)呉市での展開の可能性

 地域に根づいている「地域で子どもを育てる」、「地域で自主的に活動をする」という考え方が、自主防災組織、防災士、自治体それぞれの関係性に直結して成り立っているという印象を受けた。コミュニティ防災士ネットワークのように、活動方法が分からない防災士に対しても地域の枠を超えて、お互いの地域の防災力を高めていく体制や、地域の自主防災組織が主体となって避難所運営を行う体制は、呉市において防災意識の向上を検討するうえで、参考となるものであった。

愛知県豊橋市​

(1)調査内容

 豊橋市では、防災に対する意識向上への取組として、各種ハザードマップ、避難所の開設状況、避難情報等を入手することができる防災アプリの導入や、スイッチが切れていても緊急情報を24時間受信できる防災ラジオの整備、防災訓練等に参加したくても参加が難しい方でも、少しの空き時間を使って動画を閲覧できるようYouTubeの防災チャンネルを開設するなど、情報発信ツールを使用し、防災に対する意識向上へつながるよう啓発に力を入れている。
 また、自主防災会が行った新しい取組や、避難訓練などの活動内容を防災通信として自主防災会向けに広報紙を発行しており、自主防災活動に取り組む方の意欲の向上にもつながっている。その他にも防災士の資格要件である講習を市が主催して行うことで、通常では9万円程度かかる受講料を負担することなく受講し、防災士試験を受けることができるような取組を行っている。小学生の高学年を対象に出前講座などの防災教育を行っており、東海大地震の発生が予想されることや過去に発生した洪水等の経験から災害に対して危機感を持たれている市民が多く、地域性から豊橋市民の防災意識の高さが伺えた。
 避難所の環境整備では、主に台風や豪雨による被災のおそれがある場合に開設する第一指定避難所(公民館等)は、冷暖房設備、障害者用トイレ等のハード面の整備に加え、新型コロナウイルス感染予防対策を講じた避難所運営ができるように、感染症対策の資機材を整備している。激震災害など死傷者が多数発生するような災害が起きた際に開設される第二指定避難所(小中学校等体育館)は、過去に開設された経緯がないことから課題も残っているが、今後の大災害に向けて整備を行っていくところである。
 また、平成31年3月に登録された「道の駅とよはし」は、国土交通省の「防災道の駅」に選定され、浸水エリアや液状化の危険度が高いエリアからも離れていることから道路利用者の一時避難所とするだけでなく、南海トラフ巨大地震などの大規模災害発生時の広域防災拠点として位置付けられており、自衛隊や消防などの救援活動、救援物資等を円滑に受け入れることができるように整備されている。
 避難所の協力体制は、基本的に災害発生時や災害発生予想時に市の避難所配置職員が2名配置されるが、避難所では避難所を利用する人の自主運営を原則としており、大規模地震等により長時間にわたり避難所を開設する必要がある場合は自主防災組織、施設管理者、避難者により避難所運営委員会を設置している。

(2)質疑応答

 防災に対する意識向上への取組、情報発信ツールの詳細、自主防災組織への広報、避難所の運営について質疑を行った。

(3)呉市での展開の可能性

 大きな災害が少ない土地柄であるにも関わらず市民の防災意識が高いのは、東海大地震の発生に備えて幼少期より防災教育を行い、高い防災意識を芽生えさせていく取組や、多様な情報発信ツール等を使い、子供から高齢者まで防災に興味が持てる内容による啓発活動が大きな要因と感じた。呉市においても自主防災組織が実際に避難を経験し、災害を身近に感じることができるような防災教育を取り入れるなど、防災に対する意識の向上への足がかりとして参考にしたい。

兵庫県姫路市

(1)調査内容

 姫路市は、防災に対する意識向上への取組として、多数の取組を行っている。地域防災力の向上と防災・減災活動の支援を目的として「ひめじ防災リーダーの会」を設立しており、防災士、ひょうご防災リーダー研修受講修了者、市の研修を受講した地区の防災担当など、防災・減災に関する知識や技能を有する有志で構成されている。活動内容としては、防災に関する情報共有、自主防災会が行う防災訓練及び防災研修会のサポート等を行っており、幅広い世代の防災リーダー育成に取り組んでいる。その他にも国の平成30年7月豪雨の検証結果等から、地域の実情を踏まえた防災対策の推進を図るため、災害に対する備えをテーマとして、防災全般の講義や実技演習を実施し、また、自主防災会の活動を担う地域の防災リーダーの育成を行う地域防災力向上研修を実施している。
 避難所の環境整備については、各小中学校、公民館等が指定避難所となっており、教育委員会総務課が避難所本部となっている。指定避難所となっている小中学校では、各教室に冷暖房設備が整備されているが、トイレの洋式化が約70%、体育館に限ると約60%という整備状況である。新型コロナウイルス感染予防対策を講じた避難所運営ができるよう、感染症対策物資や資機材を配備している。
 避難所の開設は、市の避難所担当職員と施設管理者が行うこととしているが、住民の受入れや避難所運営は自主防災会を中心とした組織が結成されている。自主防災会の役割を明確化し、防災への意識を再確認するために自主防災組織の災害時対応手引を作成している。

(2)質疑応答

 避難所運営における連携方法や地区防災訓練のモデル事業、防災リーダーが地域で自主的に活動するためのサポートについてなど、質疑を行った。

(3)呉市での展開の可能性

 防災リーダー間の情報共有や相互連携を図る「ひめじ防災リーダーの会」や自主防災会の活動を担う地域の防災リーダーの育成を行う地域防災力向上研修など、防災リーダーの育成に関する取組を多く実施している。姫路市においても、地域防災の核活動になる自主防災組織が地域によって活動に温度差があることが課題であり、呉市と共通の課題を持っていることから、防災リーダーの育成に対する取組は参考になった。