ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地トップページ > 呉市議会 > 令和4年度 総合交通対策特別委員会行政視察報告

令和4年度 総合交通対策特別委員会行政視察報告

期日

令和4年7月11日(月曜日)~7月13日​(水曜日)

視察委員

渡辺一照(委員長)、光宗等(副委員長)、檜垣美良、谷本誠一、梶山政孝、井手畑隆政、橋口晶、中田光政

視察都市

月  日 視 察 先 調 査 事 項
 
7月11日(月曜日) 国土交通省 関東地方整備局
東京国道事務所
バスタ新宿について
7月12日(火曜日) 富山県富山市 公共交通とまちづくりについて
7月13日(水曜日) 石川県加賀市 MaaSを活用した公共交通の改善に関する取組について

視察目的

 呉市では、人口減少・少子高齢化の進展により、やむを得ずバス路線の統廃合や減便、運行形態の変更等の措置を取らなくてはならない状況となっており、平成30年7月豪雨により公共交通機関も甚大な被害を受けた事例を踏まえ、今後は、さらに災害に強い交通体系の整備、災害に備えた新たな交通拠点の検討等が求められている。
 そのため、人口減少・少子高齢化を見据えたまちづくり及び災害に強い交通基盤づくりを進め、持続可能な公共交通ネットワークを確立することを目的として、令和2年9月に「呉市地域公共交通網形成計画」を策定したところであるが、計画の実現のために推進する事業である、呉駅周辺地域総合開発や地域の実情に応じた公共交通サービスの展開、将来を見据えた新たな移動手段の研究などについて、関連する先進的な取組事例を学び、参考にすることで、公共交通の課題解決の一助とするため、先進事例の調査を行った。

国土交通省 関東地方整備局 東京国道事務所

(1)調査内容

 バスタ新宿は、国道20号新宿跨線橋の老朽化による架替工事により、既存の線路上空を活用した総合的な交通結節点として、平成28年4月に開業している。かねてから課題であった高速バス乗降場の点在化や、駅前車道におけるタクシーの通行阻害等を解決するため、高速バス及びタクシーの乗降場をバスタ新宿内に集約することで利便性を高め、密集していた歩行者空間も既存の30メートルから50メートルに拡幅し、回遊性を向上させている。
 多様な観光客に対応するため、開業当初から施設内には東京観光情報センターを設置しているが、開業した後も利用実態や利用者の要望を基に、適宜、利便性の向上を図る取組を行っている。具体的には、コンビニや土産物屋といった商業施設の導入、待合空間や女子トイレの増設、バリアフリー対応などがあり、様々な利用者のニーズに応えられる施設としての改善に取り組んでいる。
 施設の維持管理については、道路管理者である国土交通省とバス事業者が設立したターミナル会社が共同で行っており、協議により管理方法及び費用負担を定めている(兼用工作物管理協定)。バス事業者は、規定の使用料にバスの発着便数を乗じた額をターミナル会社に支払う運用となっており、商業施設も占用料を支払って営業しているが、加えて、公共貢献として清掃等の維持管理の一部を担ってもらうなど、持続的な運営が可能となる維持管理スキームを構築している。

(2)質疑応答

 呉市での広域間バスの実現性、地方版バスタプロジェクトの状況、初期経費の回収時期と維持経費、待ち時間での待機場所の確保、災害時の避難所対応、「バスタ」の商標登録、維持管理スキームの検討期間、施設の営業時間、利用料の算定方法についての質疑応答が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 本市では、呉駅交通ターミナル整備がバスタ新宿と同様にバスタプロジェクトとして事業化され、関連事業である複合施設整備や呉駅橋上駅化と合わせて呉駅周辺の総合的な開発を目指す「呉駅周辺地域総合開発基本計画」を推進している。新宿駅と呉駅では、規模や地理的条件から交通結節点としての役割が多少異なる部分もあるが、通勤・通学や観光など多岐にわたる利用者ニーズに的確に応える交通ターミナルを整備するに当たって、特に実態把握からの改善に関する取組や維持管理スキームの構築方法は、参考になる部分があると考える。​

富山県富山市​

(1)調査内容

 富山市では、市街地の拡大と低密度化による都市管理コストの上昇、過度な自動車依存と公共交通の衰退、人口減少や超高齢社会の到来など、都市を取り巻く課題に対応し、快適で持続可能な都市を実現するため、公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりを推進している。実現するための柱として、公共交通の活性化、沿線地区への居住推進と都市機能の集積、中心市街地の活性化に取り組んでいる。
 公共交通の活性化では、次世代型路面電車(LRT)のネットワークを形成することで、車に依存することなく歩いて暮らせるまちを実現し、特に高齢者の外出頻度の増加が顕著である。ほかにも、南北の路面電車を富山駅高架下で接続させることで、鉄道と路面電車へのスムーズな乗り換えや、北部地域から中心市街地へ乗り換えなしで直接アクセスすることが可能となり、路面電車の利便性が向上したことで、鉄道や路線バスの利用者も増加している。
 また、各種路線整備に関しては、公設民営の考え方による費用負担や、長期に安定的した運行を確保するため、軌道の整備及び車両の購入に要する費用を公が負担し、運行は民間が行うという上下分離方式を採用している。
 富山市における公共交通の軸は鉄軌道となっているが、地域特性に応じた多様な生活交通の確保するため、路線バスや公営バス、乗り合いタクシーなどの様々な生活交通が運行している。その一つであるコミュニティーバスの運行は、公共交通空白地域に対して必要最低限の交通サービス(1日2往復)を確保し、地域自主運行とすることを基本としている。地域で運営組織を立ち上げ、運行ルートや運賃などを検討する交通システムであるため、市は車両経費や運行経費などの補助を行っている。
 公共交通沿線への居住推進としては、都心地区や居住推進地区での建設や居住に対して、事業者や市民への助成を実施しており、中心市街地の活性化としても、各種イベントの開催など賑わいの核となる多目的広場の整備、23か所ある専用ステーションで自由に自転車を借りて返却できるコミュニティーサイクルシステムを導入するなど、様々な取組を行って回遊性や利便性の向上を図っている。​

(2)質疑応答

 路面電車に関する各種整備事業に伴う軌道の延長距離、路面電車整備事業費の回収見通し、ICカードの採用状況、バスロケーションシステムの導入状況、公共交通の利用者数が増加した要因、コミュニティーバスに対する支援内容と年間利用者数・負担額、デマンドタクシーの需要、寄附プレートについての質疑応答が行われた。​

(3)呉市での展開の可能性

 本市においても、コンパクトで持続可能なまちづくりを目指しており、それを実現するための公共交通ネットワークを形成する必要があるため、地理的特性や路面電車の有無といった前提条件が異なるものの、富山市の各種事業における考え方や効果、課題などは参考となるものと考える。また、官民一体でまちづくりを推進し、互いに利点のある形で施策に取り組む姿勢は、本市における公共交通とまちづくりの在り方を検討する上で、参考になるものと考える。​

石川県加賀市

(1)調査内容

 加賀市では、市が抱える地域課題の解決や人口減少に歯止めをかけるため、令和3年3月に「スマートシティ加賀推進計画」を策定し、交通分野の施策として、市内交通の最適化と回遊性の向上を目的としてMaaSの推進を掲げている。
 MaaSによる公共交通を中心とした移動の最適化や利便環境の向上等に向け、様々な交通モードが連携した経路検索や支払い、目的地周辺の施設情報の把握、多言語対応などが可能となるスマートフォンアプリを整備・運用し、令和7年度までの目標として、交通事業者等が運行情報を直接配信し、情報取得や手続きを完結できるシステムの構築を進めている。
 また、MaaSアプリなどの新たな仕組みで収集できるデータを活用し、交通版EBPM(データに基づいた公共交通の効率的で効果的な改善)による公共交通の改善に取り組むため、令和3年11月に「MaaSを活用した住民向けモビリティサービスと交通版EBPMの実現に向けた連携協定」を民間事業者と締結し、分析・検討体制を構築している。各交通事業者の改善にとどまらず、事業者の枠を超えたサービスを提供することができるよう、市内交通事業者のデータを一括して分析し、地域公共交通の改善策を検討している。

(2)質疑応答

 高齢者をはじめとしたデジタル化対策、交通版EBPMの業務提携に伴う経費、MaaSアプリで取得したデータの取扱い、MaaSアプリとマイナンバーカードの連携についての質疑応答が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 本市でも、「呉市地域公共交通網形成計画」において、将来を見据えてMaaSについての研究を推進するとしていることから、実証実験を経て、これから本稼働に向けて事業を推進している加賀市の取組は、今後の動向を含め参考になるものと考える。EBPMについては、本市においても福祉分野のデータヘルスで導入しているため、ノウハウを活用して交通分野にも展開することで、地域の実情や市民ニーズをより的確に把握し、効率的かつ効果的な公共交通サービスの提供につながるものと考える。