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令和4年度 産業建設委員会行政視察報告

期日

令和4年6月29日(水曜日)~7月1日​(金曜日)

視察委員

井手畑隆政(委員長)、橋口晶(副委員長)、藤原広、山上文恵、田中みわ子、定森健次朗、渡辺一照

視察都市

月  日 視 察 先 調 査 事 項
 
6月29日(水曜日) 埼玉県川越市 中心市街地活性化基本計画について
6月30日(木曜日) 神奈川県横浜市 (1)横浜市中小企業振興基本条例について
(2)I・TOP横浜について
7月1日(金曜日) 大阪府堺市 さかい新事業創造センターS-Cubeについて

視察目的

 本市の市街地では、商店街などの商業地域の活力低下が進む中、商業の中心を担う中小企業の活性化が喫緊の課題となっている。こうした中、本市ではこれまで、呉市中小企業・小規模企業振興基本条例の制定や、呉市商店街等にぎわい集客回復応援事業などの取組を継続的に行っているが、大規模事業所の休止問題や新型コロナウイルス感染拡大の影響により、元のにぎわいを取り戻すには至っておらず、新たな事業者の進出も進んでいないため、活気が失われた状況が続いている。
 そのようなことから、本委員会では「産業振興について」を所管事務調査のテーマとして調査研究することとし、先進自治体の取組を参考とするため、視察を行った。

埼玉県川越市

(1)調査内容

 川越市は首都圏に近く、人口増加が続いているが、歴史的・文化的に貴重な町並みも市内中心部に残されており、ベッドタウンとしての役割も持ちつつ、歴史的資源を活用した観光業も盛んに行われている。中心市街地の北部は、重要的建造物群保存地区にも指定されている蔵造りの町並みを中心とした観光地域、南部は3つの鉄道駅や、大型商業店舗を備えた商業の集積地域、中部は南北地域を結ぶ結節点とみなされている。
 川越市では、市内中心部の南部と北部の結節点となる中部地域のにぎわいが乏しく、市街地全体の活性化に支障が生じていると考えたことから、計画期間は定めず、平成11年に「川越市中心市街地活性化基本計画」を策定した。その後、計画期間を定めないことの弊害を考慮し、平成21年に改めて計画を策定し直し、平成27年に再度、計画の策定を行った。そして、令和2年3月をもって計画期間を満了し、計画の目的は達成したと判断したため、再度の計画の策定は行わなかったものである。
 計画に伴う事業の実施の代表例として、川越市産業観光館「小江戸蔵里」が挙げられる。小江戸蔵里は中心市街地中部地域にあった酒蔵跡地を市が買い取り、改装した観光・商業施設であり、特産品等の販売を行うなど、にぎわいを見せている。
 また、小江戸蔵里は北部と南部を結ぶ結節点に存在しているが、これまで、南部から北部への観光客の移動にはバスなどの公共交通機関が利用されており、中部に立ち寄る観光客が少ないという課題があった。しかし、小江戸蔵里の開館によって、中部に立ち寄る観光客が非常に増えている。

(2)質疑応答

 結節点整備の事業効果、中心市街地以外の住民の反応、計画の周知やフォローアップの方法などについて質疑が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 呉市にも魅力ある歴史資源が豊富に備わっており、一部の地域ではにぎわいを見せているが、そのほかの地域には観光客の立ち寄りが少ないという実態がある。川越市の事例を参考に、行政がまちづくりに深く関わりを持ち、回遊性のある町並みの整備について、計画的に取り組むことが必要ではないかと感じた。​

神奈川県横浜市​

(1)調査内容

 横浜市では、市内に約7万2,000社存在する企業のうち、99.5%が中小企業であり、市内経済に大きな影響力を持っている。これら中小企業の振興に関する施策を総合的に推進し、市内経済の発展及び市民生活の向上に寄与することを目的として、平成22年1月に横浜市中小企業振興基本条例を議員提案で制定し、中小企業の振興を進めている。
 本条例の最大の特徴は、1年に一度、議会に対して事業の進捗状況の報告義務が明記されており、庁内の全部局で中小企業振興の重要性について、認識の共有を進めているところである。実際に、中小企業を活用する意識は向上しており、市内業者の活用実績は上昇傾向が続いている。
 また、横浜市ではIoTビジネスの支援を通じて、新たなビジネスモデルを創出することなどを目的とする、I・TOP横浜という事業にも取り組んでおり、 IoTに関する様々な実証実験に対して、実施場所の提供や、官公庁への橋渡しの協力、補助金の交付など、事業者がチャレンジしやすい環境となるよう積極的に取組を行っている。
 具体的には、会話の音声をリアルタイムに認識し、アクリル板などに貼付したスクリーンに字幕表示するシステムの実証実験の実験場所として、横浜市中区役所の窓口を提供することや、市内商店街でIoTの実証実験を行いたいという提案に対して、商店街と事業者の橋渡しを行うなど、IoTの進展のために様々な方法で協力している。

(2)質疑応答

 条例の議会への報告にどの程度の労力がかかっているのか、条例の進捗状況の報告を議会に義務づけた理由、横浜市へのIoT企業の移転状況、国へのアプローチ方法などについて質疑が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 中小企業振興条例については、議会への報告を義務づけたことによって、庁内全部局の市内業者活用の意識が向上しており、実際に市内業者への業務委託比率が大きく向上していることからも、一定の効果があると思われる。
 また、I・TOP横浜については、呉市で同じような取組を行うことは難しいかもしれないが、事業者からすると面倒な事務手続や、場所の確保などについて、市が協力する姿勢を示すことが、企業のチャレンジ精神の向上や市内への起業立地の促進にもつながると考えられるため、可能な限り企業に寄り添う姿勢を持つことは必要だと感じた。

大阪府堺市

(1)調査内容

 堺市は平成14年に新事業創出支援を目的に、さかい新事業創造センターS-Cubeを開所し、これまで150社以上の起業を支えてきた。
 起業希望者が集まる要因として、施設は南海電鉄中百舌鳥駅から徒歩5分、関西国際空港まで電車で1時間程度の好立地に位置しており、隣接している産業振興センターから、必要に応じて専門的な支援を受けることも可能であることが考えられる。
 入居可能期間は最大で3年間だが、その間は、補助金を活用することで周辺に比べて非常に安価にオフィスを借りることが可能である。また、経営支援のプロであるインキュベーション・マネージャーが施設に常駐しており、ビジネスプランの作成、経営、販路開拓、融資、補助金獲得など、企業からの様々な相談に対応することが可能となっている。

(2)質疑応答

 入居するための要件、インキュベーション・マネージャーの具体的な業務内容、施設の広報などについて質疑が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 呉市にもBit’z呉という施設があり、創業支援に取り組んでいるが、S-Cubeの起業につながりやすい雰囲気づくりや、起業希望者の要望に対する細やかな支援などの事業内容を参考に、呉市の産業振興に資するものについては、積極的に取り入れるべきだと感じた。