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令和元年度 民生委員会行政視察報告

期日

令和元年11月5日(火曜日)~7日(木曜日)

視察委員

谷惠介(委員長)、中原明夫(副委員長)、石崎元成、片岡慶行、岡崎源太朗、谷本誠一、定森健次朗

視察都市

月   日 視 察 先 調 査 事 項
 
11月5日(火曜日) 神奈川県横須賀市 農福連携協定について
11月6日(水曜日) 奈良県橿原市 子ども総合支援センター事業について
11月7日(木曜日) 大阪府茨木市 茨木市障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例について

視察目的

 本市では、障害者に対する理解度が低く、設備・人的サポートも不足していると思われ、これを改善するためには、健常者も障害者も分け隔てなく暮らすことのできるまちづくりが必要であると考えられる。

 このことから、本委員会では「障害者の自立支援について」を、所管事務調査のテーマとして調査研究を行うこととした。 

神奈川県横須賀市

(1)調査内容

 横須賀市では、障害のある方に、仕事を通じた活躍の場を提供することを目的として、人材派遣を主業務とするパーソナルホールディングス株式会社の特例子会社であるパーソルサンクス株式会社との農福連携協定を平成30年6月19日に締結した。
 パーソルサンクス株式会社の運営方法としては、労働力を必要とする農家から依頼を受けて障害者を派遣しており、依頼者側からパーソルサンクス株式会社に対して委託料が支払われた後、障害者に工賃として分配している。
 農福連携協定の主な効果としては、農機具を使うよりもコストパフォーマンスに優れていることや、障害者の工賃上昇につながること、事務所の中で落ち着かない障害者も土いじりをする間は精神の安定が得られることが多いため、福祉事務所の職員の負担軽減につながることなどが挙げられた。
 現在障害者の一般的な就労の現状としては、手紙の封緘作業などの単純労働に限られており、就労するための選択肢が限られているが、横須賀市では農福連携協定を締結したことにより、障害者の新しい職域の確保や、地域との交流促進、障害者への理解促進、社会的自立の促進など様々な効果が得られているということだった。
 また、横須賀市では特例子会社を積極的に誘致しており、市から補助金を年額8,800万円支出している。
 しかし、農家から事業に対する理解がまだ十分に得られていないことや支援スタッフの充実、安価な労働力供給システムとしないための仕組みづくりが不十分であるといった課題もあった。
 課題の解決策として、人材育成セミナーを開催することで農福連携について知識を持つ人材の育成や、市立高校の生徒に農福連携について紹介するイラストや漫画を作成することにより、認識を広げる活動を行うなどの対策を行っている。
 

(2)質疑応答

 職場適応援助者(ジョブコーチ)育成についての詳細、神奈川県内他市町の特例子会社設立の状況、障害者雇用奨励金の詳細、農福連携事業全体の経費などについて質疑が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 呉市内でも一部の事業所等がキノコの栽培に取り組む事例はあるが、あくまで事業所内での訓練の一環として取り組んでおり、横須賀市の事例のように相手方から依頼を受けて、1つの仕事として障害者の自立支援を行う本事例は参考とするべきだと考える。
 ただし、農家がある程度大規模でなければ、依頼自体行うことが難しい状況であることや、多くの依頼がなければ採算をとることが難しいことなど一定の課題を抱えており、呉市で展開するに当たってはこれらを念頭において取り組んでいく必要がある。

奈良県橿原市

(1)調査内容

 橿原市では、昭和50年から市内中心部で障害者を対象とした福祉施設「かしの木園」を運営してきたが、施設の老朽化や発達障害者に対する理解促進による施設利用者増加等に伴い、平成26年に廃校となった小学校の校舎を改装し、新たに「子ども総合支援センター」として開所した。
 センターの特色としては、教育委員会が所管していることと、正規職員18名、非常勤職員16名の合計34名という手厚い体制で運営に当たっていることが挙げられた。
 総合支援センターの名のとおり、多くの市町村では各所に点在している公的 な障害者福祉施設の機能が集約されており、ほぼすべての案件について同センターで受け入れが可能となっている。また、専門医師が定期的にセンターを訪問するなど、幼児期からの相談体制も整っており、早い段階で障害の有無の判断が可能であるため、早期の支援に取り組むことができている。
 そして、児童の年齢や発達段階に応じてさまざまな教室を開いている。概ね1歳半から5歳児を対象とした「幼児療育教室」や、親同士の交流機会の増加等を目的とした「ふれあい教室」、3歳6カ月児健診から就学までの子どもを対象とする「ぐんぐん教室」などを開いている。また、就学後も通所することは可能であり、幅広く受け入れする体制が整っている。

(2)質疑応答

 市内の民間事業者や県機関との連携に関連して多くの質疑が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 現在呉市内では発達障害を診断することのできる医療機関が少なく、また、広島市内等の医療機関で診断するには、半年近く予約待ちをする必要がある。
 橿原市の子ども総合支援センターでは専門医等に月3回来て頂いており、早期に発達障害等の診断を行うことができる体制づくりをしている。また、多くの市町村では各地に分散している支援施設の機能を本センターに集約することにより、幼少期から就労にかけての幅広い年齢層に対して支援が可能となっており、呉市の抱える「支援機関の窓口がばらばらでわかりにくいこと」や、「医療機関の不足」といった課題を解決する上で参考になると考えられる。
 しかし、多様なサービスを提供するために多くの職員を抱えることで、年間約1億6,000万円程度の人件費が必要となっており、呉市で同様の施設を開所するに当たってはコスト面の問題が大きな課題になると考えられる。

大阪府茨木市

(1)調査内容

 茨木市では、「茨木市障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」を策定し、障害者に対する差別解消と、合理的配慮の形成に力を入れて取り組んでいる。
 大阪府内において、障害者との共生条例を策定している市町村は茨木市のみであり、全国の市町村でも平成30年度末時点で20市しか策定していない。
 策定の経緯としては、平成26年1月に国が障害者権利条約を批准し、平成28年4月に障害者差別解消法が施行され、障害を理由とする差別の禁止や合理的配慮の提供が規定されたことにより、行政機関として取り組みを進める必要性を感じ、条例の制定に至った。
 茨木市の条例の特色としては、他自治体の条例が差別禁止に関する規定に特化したものが多い中、差別禁止のほかに手話言語、その他教育や就労、バリアフリー等に関する合理的配慮の提供への取り組みについて定めるなど、総合的な条例となっていることが挙げられた。また、条例策定に当たっては、障害当事者が検討委員会のメンバーになり、当事者目線で条文や規定の見直しを進めることでより当事者に寄り添った文言となっている。
 そして、茨木市では事業者に対して合理的配慮の提供を義務づけることを条例に規定しており、事業者が合理的配慮の提供をするための、点字メニューの作成や折りたたみ式スロープの購入、段差の解消工事などに対して上限額は定まっているものの補助率100%の補助金を提供しており、条例の実効性を高める取り組みも進めている。

(2)質疑応答

 障害者理解促進事業の詳細、補助制度見直しの経緯、合理的配慮の提供を進めるに当たっての民間事業者の声、障害者差別に対するあっせん・勧告・公表の詳細などについて質疑が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

  呉市において、同様の条例を策定するにあたっては、茨木市と同様に障害当事者の声を取り入れ、実態に則したものとなるよう充分に検討する必要がある。