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令和4年度 民生委員会行政視察報告

期日

令和4年6月29日(水曜日)~7月1日​(金曜日)

視察委員

阪井昌行(委員長)、梶山政孝(副委員長)、谷本誠一、山本良二、小田晃士朗、中田光政

視察都市

月  日 視 察 先 調 査 事 項
 
6月29日(水曜日) 佐賀県佐賀市 介護予防DXについて
6月30日(木曜日) 福岡県飯塚市 フレイル予防事業について
7月1日(金曜日) 大分県 健康寿命延伸の取組について

視察目的

 呉市では、少子高齢化の進展や、年少人口及び生産年齢人口の減少に加え、高齢者人口も平成29年をピークに減少に転じているが、介護の需要が増加する75歳以上の後期高齢者は毎年増加している。現役世代は減少する一方で、介護需要や社会保障費などは増加するという不均衡が生じることから、高齢者が介護等を必要とすることなく健康に暮らす期間の延伸は、将来にわたって市政や市民に大きな影響を与える重要な課題である。
 そこで、本市では、高齢者誰もが、住み慣れた地域で健やかに安心して暮らし続けることができるまちの実現を目指し、生涯にわたり生きがいを持ち、健やかで自立した生活を送ることができるよう、高齢者が主体となって行う健康づくりや、高齢者一人一人の健康状態に応じたフレイル予防などに取り組み、健康寿命の延伸を図っている。
 しかし、市が行った調査では、高齢者の約4分の1が閉じこもり傾向にあり、高齢者の社会参加の促進や地域活動における担い手不足の解消など、現在も様々な課題を抱えていることから、本委員会では「高齢者の健康づくりについて」を所管事務調査のテーマとして調査研究することとし、先進自治体等の取組を学び、参考にすることで本市の課題解決の一助とするため、先進事例の調査を行った。

佐賀県佐賀市

(1)調査内容

 佐賀市の介護予防DXでは、医療・介護・健診等のデータを活用して高齢者を階層化し、グループに分けてアプローチの優先順位や対応策を検討・実施することで、生活習慣病の重症化予防に取り組んでいる。階層化に当たっては、介護や健診、医療の有無、合併症や基礎疾患の有無などの要素を参考としており、分析によってハイリスク者を把握するとともに、グループに応じて保健師や管理栄養士等が個別訪問したり、医療機関との連携や受療及び健診受診の勧奨などの支援を行っている。
 フレイル予防としても、民生委員が3年に2回実施している高齢者の全戸調査のデータと医療等のデータのクロス分析により、フレイルリスクを数値化してハイリスク者を把握し、対象者の状態に応じて介護予防事業につなげる等の支援を行っている。ほかにも、75歳を迎えた高齢者を対象に、保健師等の専門家が身体機能や認知機能を検査する元気度測定を市内10か所で開催するなど、市民への意識啓発にも積極的に取り組んでいる。
 また、データ分析により支援等が必要となった場合の受け皿となる住民主体の介護予防教室や通いの場の充実など、地域づくりにも並行して取り組んでおり、地域での支え合いを推進するために生活支援コーディネーターを配置し、通いの場の創出や移送サービスの構築などを行っている。

(2)質疑応答

 階層化されたグループへの今後の支援予定、データ分析と支援のサイクル期間、事業費などについての質疑応答が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 本市においても、佐賀市の介護予防DXと同様に医療・介護・健診等のデータを活用し、効果的な保健指導等を行うデータヘルスを推進しているが、民生委員による高齢者の全戸調査やハイリスク者の階層化など、本市とは異なるデータ活用・分析を行って重症化予防やフレイル予防に取り組んでいる点は、データヘルスの推進及び改善を図る上で参考になるものと考える。​

福岡県飯塚市​

(1)調査内容

 飯塚市では、平成28年度に東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)が考案したフレイル予防プログラムを導入し、複合的に自分の健康状態を知ることができるフレイルチェックシートを活用して、日常生活における危険な老化のサインを早期に発見、対応することで、高齢者の健康維持を図っている。
 住民が主体的にフレイル予防に取り組めるように、市は、地域住民が集う場所でフレイルチェック等を行うフレイルサポーターを養成しており、サポーター活動は基本的にボランティアで行っているため、少ない事業費で住民主体の地域活動を活性化し、健康長寿のまちづくりにつなげている。
 令和4年度からは、フレイルサポーターが地域の通いの場等に赴いて、筋力トレーニングの指導や寸劇、レクリエーションなどを行う取組(サークル活動)を開始しており、地域活動の担い手としての活躍の場を多様化させるとともに、参加者が簡単に楽しく取り組めるものを提供することで、通いの場の活性化を図っている。
 フレイルリスクという点において、運動習慣の有無以上に社会参加活動の有無が大きく影響するという調査結果が出ていることからも、地域活動の活性化を担うフレイルサポーターの活動は、飯塚市の健康寿命延伸に関わる重要な役割を担っている。
 また、フレイルサポーターは、地域貢献や自分自身のフレイル予防を行いたい人にとって、うってつけの活動でもあるため、フレイル予防事業は、地域活動の担い手不足を解消する施策としても機能している。​

(2)質疑応答

 フレイルチェック後の改善に向けた取組、フレイル予防教室の内容、フレイルチェックを実施する機会、フレイルサポーターの養成方法、フレイルサポーターのやりがいなどについての質疑応答が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 本市にも、既存の健康づくりに関する取組や実施団体などがあるため、IOGが考案したフレイル予防プログラムを全て取り入れることは困難であるが、例えば、フレイルチェックを通いの場やふれあい・いきいきサロンで実施するなど、部分的に展開することは可能であると考える。また、地域活動の担い手の活躍の場が広がるサークル活動のような取組は、住民が主体となって地域を活性化する観点から参考になるものと考える。

大分県

(1)調査内容

 大分県は、多様な主体との協働によって健康寿命の延伸に取り組んでいる点に特徴があり、運動習慣や栄養バランス、社会環境等の改善に協力してもらえる企業や各種団体を「健康寿命日本一おうえん企業」として募っており、現在では、100以上の企業や団体が登録している。ほかにも、大分県と県内主要39団体で構成される県民会議(健康寿命日本一おおいた創造会議)を年2回開催し、おうえん企業を含めて情報交換や連携強化を図ることで、健康寿命の延伸に取り組む企業や団体、県民にとって様々な利点が生まれるように工夫しながら、健康な地域社会づくりを推進している。
 大分県が平成28年に行った健康意識に関する調査から、健康に問題を抱える20代~40代が多いことが、結果として健康寿命を短くしていると考え、多世代が楽しく得をしながら健康づくりに取り組めるように、スマートフォン用健康アプリ「おおいた歩得(あるとっく)」を開発・運用している。歩いたり、健康づくりイベントに参加したりすることでポイントがたまり、たまったポイントを利用することで、県内にある協力店で特典を受けられる仕組みを構築しており、ゲーム感覚で健康づくりを楽しんでもらえる工夫をしている。県内の市においても、市独自で実施している健康マイレージ事業と連動させることで相乗効果が生まれ、さらなる健康意識の醸成につながっているところもある。
 また、コロナ禍により、一時は約9割の団体が活動を停止していた通いの場については、外出できない場合でも活動を続けられるように、オンラインでの開催を推進している。高齢者がスマートフォンやタブレットの使い方を学んだり、ZoomやLINE等のアプリを体験する機会を設けるほか、広報として動画やリーフレットを作成するなど、オンライン通いの場の普及に取り組むことでも、高齢者の健康づくりにつながる環境構築を進めている。

(2)質疑応答

 おうえん企業への補助、各種取組の健康効果、おおいた歩得のアプリ制作、協力店への補助及び店舗数の状況などについての質疑応答が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 高齢者に限らず、運動習慣の定着は健康寿命の延伸に大きく関わることから、県が主導の施策であるとはいえ、ポイントをうまく活用した多世代が楽しめる健康アプリの運用は、本市が幅広く健康づくり施策を展開する上で参考になるものと考える。
 また、本市においても、コロナ禍の影響により、通いの場の活動ができなくなったことによるフレイルの進行が懸念されるため、特定の場所に集まることができなくてもオンラインを活用して通いの場を開催し、住民同士の交流を継続できるように、大分県の取組を参考に体験教室の開催などを検討し、環境整備に努める必要があると考える。