呉市立図書館 「読書感想文」
第11回ブックリスト読書感想文 入賞者
呉市立図書館が作成したブックリストの推薦本を対象とした読書感想文募集に374名の応募がありました。
たくさんの御応募ありがとうございました。
その中から選ばれました入賞者11名を紹介します。おめでとうございます。
最優秀賞 広 南 小学校 3年 折 出 愛
優秀賞 広 小学校 5年 田 村 恵 理
優秀賞 広 南 中学校 2年 大 橋 琴 子
佳作 白 岳 小学校 1年 瀬 尾 美 月
呉 中 央 小学校 1年 細 川 陽 輝
広 小学校 5年 藤 井 咲 希
広 南 中学校 3年 三 谷 歩 璃
白 岳 中学校 3年 金 田 詩 季
白 岳 中学校 3年 友 池 愛 美
白 岳 中学校 3年 三 井 野々香
安 浦 中学校 3年 小 林 志 織
最優秀賞・優秀賞を受賞されました3名の感想文を紹介します。
最優秀賞 「かこさとし」 広南小学校 3年 折出 愛
わたしは、かこさとしの絵本が大すきです。かこさとしが、どのような人生を歩んできたのかを知りたくて、この本をえらびました。
福井県で生まれたかこさとしは、東京大学に進学しますが、せんそうで多くのなか間をうしなうかなしい体けんをしました。ぐん人になることもできないまま、終せんをむかえ、苦しみました。そして、子どもたちに自分と同じようなあやまちをしてほしくない、自分で物事が考えられる人になってほしいというねがいから、その後の人生を子どものために生きようと、決めたそうです。
わたしは『だるまちゃんとてんぐちゃん』を読むと、まるで、だるまちゃんが自分のように思えてきます。だるまちゃんのおねがいに、いつもやさしくこたえてくれるお父さんは、わたしのお父さんそのままなので、つつみこまれるような、温かい気持ちになります。そして、かこさとしは、宮沢けんじのカラスへのあいじょうにみちた作品を読んだことから、カラスに、あい着を持っていたと知りました。だから『からすのパンやさん』に、登場するカラスには、いろいろな表じょうがあり、心やさしい文章や絵になっているのだと思いました。さらに、科学絵本は細かい絵がかかれているので、写真で見るよりも、よく理かいすることができます。むずかしい内ようを、子どもに分かりやすくつたえるために、ぼう大な時間をかけて、作り上げたそうです。
かこさとしは、九十二年の生がいを通してわたしたち子どもに、たくさんのたから物をのこしてくれました。やさしく語りかけてくれるような言葉でいつも心によりそってくれます。これからも読みつづけて、自分で物事が考えられる大人になっていきたいです。
優秀賞 「チェスターとガス」 広小学校 5年 田村 恵理
自閉しょうの少年「ガス」と、夢みたほ助犬になれなかった犬「チェスター」。この本は、チェスターの目線から語られた物語だ。
音にびん感でせん細なため、ほ助犬の試験に落ちてしまい、ペットとしてある家族のもとで過ごすことになったチェスター。ふたりの友情物語はここから始まる。
チェスターはガスの心を知ろうとするが、ガスはしゃべらないし、特ちょう的な動きで気持ちを表すため、理解することがむずかしい。一歩前に進んでも次の日にはふり出しにもどってしまう。なかなか上手くいかない様子がとてももどかしかった。しかし、チェスターがあきらめずに全力で向き合うと、次第に心が通じ、理解し合っていくようになった。
ガスが、「学校に・・・・・・行きたい。」と自分の意志を口にしたのも、チェスターの存在があってこそだ。上手くコミュニケーションがとれず、いやなことも起こる。しかし、チェスターはガスならできると信じ、寄りそい続けた。ガスは、学校でいろいろな人に出会い、好きな人を見つけた。友達にほほ笑むこともできた。チェスターの、相手に寄りそい思いやる気持ちが、ガスの成長にもつながったのだと思う。
チェスターは、「ガスと一緒にいたい。ガスを守りたい。」そう思っただろう。もっと、いろいろな人の役に立ちたいというチェスターの想いは、ちゃんと届いているよと言ってあげたい。「愛情があれば、文字なんていらない。そばにいて、相手の心に耳をすますだけで、気持ちと気持ちがまじりあう。」というチェスターの言葉。寄りそって心から相手を想う気持ちがあれば、その想いは相手に届くと、チェスターは教えてくれた。
私もチェスターのようになりたい。愛情を持って寄りそえば想いは必ず届くと信じて。
優秀賞 「かこさとし」 広南中学校 2年 大橋 琴子
「いや、休むのは、僕が死んでからです。」命のある限り全力を尽くす。それが、かこさとしさんの生き方だ。今と昔とでは、子供達を取り巻く環境は変わった。けれど、遊びを通して工夫することの大切さを学ぶ。夢中になれるものを探す。人と人との触れ合いを通じて豊かな心を育てる。家族や友達みんなで助け合っていく。これらは、どんな時代でも絶対に変わらないはずだ。世界の恒久平和、貧困、差別。これらの問題を、若い人こそが自分の問題として真剣に考えてくれるのではないか。作者が自らの人生を通じて得られたことを後の世に残そうと、絵本や紙芝居を描き続けたそんな生き方に魅了される。
私は、小さいころから絵本を読むのが大好きだ。中でも『からすのパンやさん』などのシリーズはよく読んだ。かこさとしさんの絵本は、誰もが一度は読んだことのあるだろう名作が多くある。子供の興味を惹く絵本や、分かりやすく夢中になって読み進められるお話など、中学生になって読み直してみても、心惹かれるものばかりだ。
そんな楽しい絵本を描くかこさとしさんだが、過去には辛い戦争を経験している。「社会の役に立とう」と一度は軍人を目指した。しかし、視力が弱く軍人になることができなかった。すると、軍人になるための審査をする将校が「なんだ、お前は軍人にもなれんようなやつか。」と軽蔑するように言った。戦争を経験したことのない私には、戦争を目の当たりにする恐怖も、戦争が与える国や国民への重圧も、戦争に参加することが「お国のため」であるという概念も何も分からない。だが、これだけは分かる。戦争はこの将校のように、理不尽な考えを生み、芯の冷たい人間にしてしまうということ。戦争を前にすると、それに関わる人誰もが自分の意思を殺して、必死に戦い続ける。戦争に参加することこそが社会の役に立つことだと信じ続けてしまうから。簡単に人が死に、簡単に一人の人生を変えてしまう。そんな戦争が、今、この瞬間にも、多くの人を、心を、殺している。
かこさとしさんが描く、子供たちの興味を惹く楽しいお話。その奥に隠れた、日中戦争での辛い経験から生まれた思い。それは、子供たちの将来のため・・・。間違った判断をする人ではなく、自分で考えられる人になってほしいという思いで優しく、力強い。多くの作品を残したが、そのすべてが、未来ある子供たち、若者たちへの大事なメッセージ。
それは、かこさとしさんの作品から直接には感じることができない。だが、しっかりと根付く、世界中の子供たちへの強く温かい思い。それを知ったとき、私はもう一度、子供の頃に読んだ、あの大好きな「かこさとし」の絵本の一ページをめくろうと思った。