平成28年2月26日,29日に行われた市政に対する市議会議員の質問と,市当局の答弁を一部紹介します。
質問の項目については,各々の質問者に選んでいただきました。
この欄は,市政だより平成28年6月号にも掲載されました。
妊娠、出産、育児に関する若い世代の不安や悩みを解消するためのワンストップ窓口となる子育て世代包括支援センター(ネウボラ)が整備され、平成28年度から運用が始まりますが、その運営体制および方針について伺います。
子育て世代包括支援センターでは、保健師、助産師などの専門職を母子保健コーディネーターとして配置し、不妊治療助成や子育てに関する相談のほか、産前産後サポート事業や産後ケア事業などを実施する予定です。今後、母子保健コーディネーターを中心に、医療機関や助産師会、民生委員児童委員などと連携しながら、妊娠期から子育て期にわたるさまざまなニーズや不安に対応する協力体制を構築していきたいと考えています。
災害時にマンホールの上に設置するマンホールトイレは、仮設トイレに比べ、迅速な組み立てが可能で、下水道管につながっていることから、くみ取りの必要がなく、日常生活に近いトイレ環境を確保できるのが特徴です。今後、中央公園を防災公園として整備する際には、マンホールトイレの導入が必要だと考えますが、市の考えを伺います。
災害時のトイレについては、被災者の健康を維持するために、衛生管理が重要であり、特に女性や高齢者に配慮したものにすることが必要であると認識しています。今後、マンホールトイレの有用性に着目し、災害時に被災者が安心して利用できる快適なトイレの整備を目指していきたいと考えています。
定住・移住促進に向けたポイントは若年層の定着であり、これを促進することにより、産業、教育、地域づくりなど、さまざまな面で活性化することが期待できます。そのためには、親世帯との近居を促進する施策を実施することにより、子育て世帯の負担軽減を図ることなどが考えられますが、施策の効果が現れるまでには時間を要するため、息の長い取り組みになると思います。そこで、定住・移住促進に向けた具体的方策について、市の考え方を伺います。
移住の促進については、民間事業者や庁内関係部署との連携を強化し、定住サポートセンターの総合窓口化を図ることで、移住希望者への情報提供や相談体制の充実を図っていきます。
また、移住希望者の住宅取得の支援および子育て世帯の市内定住の促進のために、中古住宅購入費の2分の1を補助し、さらに親世帯との近居等の場合は助成額を加算することを考えています。
さらに、今年度実施している市内全域の空き家の実態調査に基づき、空き家所有者などへの意向調査を実施するとともに、家財道具の処分費についても助成を行うことで、空き家バンクなどへの登録物件の掘り起こしを図っていきます。
定住・移住の促進のためには、住まいに関する支援をはじめ、働きやすさや育てやすさにつながる総合的な支援が必要であり、大学や金融機関などとも連携をし、積極的に取り組んでいきます。
大和ミュージアムは年間を通じて市内外から多くの観光客でにぎわっています。このような場所を利用し、地域産品販売拠点施設となる道の駅を整備すれば大きな経済効果が期待できると思いますが、市の考えを伺います。
道の駅は必要な機能の整備や条件があり、また、近隣施設への影響も考えなければなりません。
そのため、道の駅と同等の機能を有し、より効果的な産直市が開催できないか検討しており、今年度初めての試みとして、大和ミュージアムに隣接した商業施設の駐車場で産直市を開催したところ、大変好評でした。
今後も地域産品販売拠点の整備について、近隣の商業施設と連携し、道の駅同等の効果的な産直市が開催できないか検討していきます。
オリーブ栽培は瀬戸内の気候に適し、無農薬栽培が可能であり、国内でも需要があるため、オリーブが特産品になれば将来にわたり農業振興が図れると思いますが、市の考えを伺います。
市は地方創生交付金を活用し、新たな特産品などの開発やブランド化に取り組む事業を公募しました。その際、島しょ部の農地等を活用したオリーブの栽培を行い、苗木の植栽による遊休農地の解消、新たな特産品の開発による6次産業化、レストランの設置、イベント開催などにより地域経済の活性化を提案する事業を採択しました。
こうした新産業創出の機会を捉え、他の地域とも連携を視野に入れた振興策を協議しており、苗木取得に係る助成や多様な商品の開発支援を行い、市のブランド化の確立を目指していきたいと考えています。
新年度予算は、回復傾向の経済情勢とはいえ、地方財政が非常に厳しい環境下で『「絆」と「活力」を創造する都市・くれ』の実現に向け、魅力ある都市を創生し、次世代に引き継いでいく責任世代としての立場を持って編成された予算だと思いますが、新庁舎での最初の年度予算として、どのような点に特に意を用いたのか、市の考えを伺います。
新たなまちづくりの初年度となる新年度予算で特に意を用いたのは「地方創生」と「中核市」の二点です。
市の人口減少の大きな要因は若年層の人口流出であることから、若年層を対象とした仕事づくり、人づくり、まちづくりに特に力を入れ、呉らしさを生かした地方創生を推進していきます。
若者の就業の確保は喫緊の課題です。ものづくり産業の振興に加え、島しょ部を中心に農水産業の6次産業化やサービス業の出店奨励などによる第3次産業の振興にも力を入れ、若者の流出に歯どめをかけていきます。
また、市は本年4月に中核市に移行することで、より幅広い事務権限を持つことになります。迅速で細かなサービスの提供が可能になり、父子・母子家庭などへの福祉資金の貸し付けや不妊治療費の助成など、拡大した権限を最大限に有効活用し、市民サービスの向上を図るとともに連携中枢都市圏の形成を目指していきます。
新年度は新たな時代の幕あけとなる重要な年であり、次世代に魅力ある都市を引き継ぐため「中核市くれ創生予算」と銘打ち、新たな思いで果敢に取り組んでいきます。
市は昨年3月以降、国の交付金を活用して、地方創生に資する取り組みを先行して実施するとともに、第4次長期総合計画と表裏一体をなす呉市版地方創生総合戦略を新たに作成し、いよいよこれを本格化させる段階に来ています。
まさに新年度予算は地方創生元年予算と言っても過言ではない中、地方創生の実現に向けてどのように取り組んでいくのか、市の決意を伺います。
地方創生の理念は、各地域がそれぞれ持っている固有の財産や宝を見詰め直し、これを生かしてみずからの生き筋を見つけていくことだと考えており、新年度予算には地方創生関連の予算を盛り込み、本格的に推進していきます。
特に若年層の定着は喫緊の課題であることから、ものづくり技術の高度化促進などを通じ、若年層の雇用に積極的に取り組むとともに、子育て支援、特色ある呉の教育の推進、大学と連携したアスリートの育成などによる子育て・子育てしやすい環境づくり、若年層の定住・移住に向けての支援を充実させることにより、将来世代の核となる若者が集い、にぎわうまちづくりを推進していきます。
そのためには「民の力」を引き出すこと、または民間主導でまちづくりを進めることに行政としてしっかりと後押しをすることが欠かせないと思います。
これまでのような公共事業的な発想から一歩進んで、多様な主体と連携しながら人口減少対策や地域の活性化の実現に向け、全庁あげて取り組んでいきたいと考えています。
消防は経験がものを言う職場であり、年代ごとの職員数を適正に確保していかなければならない職場だと思います。
そのような中、豊町や豊浜町では大崎下島出張所の配備体制が縮小されたことによって死者が出たという話を住民から何度も聞きます。
これまで応援体制を組んで災害などに当たっていると聞いていますが、その声は地域住民の隅々まで届いていないのではないかと思います。
配備体制を増やすことは難しいと思いますが、少しでも島しょ部の住民が安心できる別の策がないのか伺います。
大崎下島出張所は、豊島大橋の完成に伴い、他の署所からの応援が可能になったことなどの理由により、開設当初の消防隊1隊と救急隊1隊の職員18名体制から、消防救急兼務隊1隊の職員12名体制に移行しましたが、移行後の火災発生件数、死傷者数は、移行前後に大きな変化がないことから、出張所の縮小は影響していないものと考えています。
しかし、大崎下島出張所は遠隔地にある出張所に変わりありませんので、出張所から離れた場所へ業務出向する場合や救急出動の場合は、蒲刈消防隊を出張所へ詰めるなど対応し、東消防署を上げて島しょ部の災害対応に万全を期しているところです。
現状では大崎下島出張所に特化した増員などは困難であると考えますが、今後とも市民の皆様の安心・安全を守るために消防団との連携強化、地域行事への消防職員の参加など、市民の信頼構築に努めていきます。
これまで市は、昭和47年に制定した呉市民憲章に加え、都市宣言をし、市の存在感を明らかにして発展してきました。
そこで、市はそれぞれの都市宣言に基づいて、どのように取り組み、また、今後それらを風化させないため、どのように市民にアピールしていくのか伺います。
都市宣言はその時代の社会状況を反映した行政課題に対応するため、市の姿勢、目標を掲げたものと認識しています。
安全都市宣言では、安全ポスター展の開催や新1年生へのランドセルカバー贈呈などを実施しています。
暴力追放都市宣言では、条例を制定し、関係機関と連携して暴力団の追放に取り組んでいます。
核兵器廃絶・平和都市宣言では、核実験などに抗議文を送付するなど取り組んでいます。
人権尊重都市宣言では、市民の人権意識の高揚に取り組んでいます。
美しいまちづくり宣言では、魅力ある都市景観づくりに貢献している建物やまちづくり活動などを対象に広く表彰を行っています。
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のまちづくり宣言では、ワーク・ライフ・バランス社会の実現を掲げ、各種研修会などを開催しています。
このような取り組みを実施するとともに、チラシやポスターなどのほか、市内20カ所の文字表示盤において、広く市民にアピールしています。
今後は、新庁舎の情報モニターやホームページを活用し、市民や事業者などに広く周知することも考えていきます。
呉市中学校給食検討委員会が策定した基本構想では、小中学校全体の給食施設にかかる初期投資と維持管理費を含めた50年間の累計額が記載されています。これによると、中学校デリバリー給食と小学校自校調理場の建て替えを含めた総費用が210億1,000万円に対して、1万食の調理能力を有する小中学校一体型共同調理場建設の方が177億5,000万円とコスト面で圧倒的に有利でした。
そこで、中学校給食の実施に当たっては、小中学校全体で判断する必要があったのではないかと思いますが、市の考えを伺います。
デリバリー方式の導入に当たっては、早期に実施できること、初期投資が安価であること、家庭でつくる弁当も併用できる選択制の導入が可能であることの3項目を主に重視し、実施の方針を決定したものです。
他市ではデリバリー給食から共同調理場方式へ方針転換したところがあります。
合併特例債の発行残額が約2億円といわれる中、合併建設計画に計上されている他の学校施設に関する事業を、共同調理場の建設に振りかえることで財源を確保できると思いますが、市の考えを伺います。
デリバリー方式による中学校給食は、平成27年9月から開始したばかりであるため、今の段階で方針転換をすることは性急であると考えています。
今後は改善すべきところを修正しながら、よりよい給食の提供を目指していきます。
他市では、ある程度の生活の保障をし、外部から人を呼び込む施策や、地域の産物で何か生み出せるものはないかという視点で施策を展開しているところがあります。
例えば、その地域の特色ある技術力を再度復活させようとする取り組みや、廃校になった校舎を企業が借り受け、地元の人たちを雇用し食品加工工場として使用しているケース、多数の若者を雇用し測量会社を運営しているケースなど、安易に解体せず、あるものを有効に使って人を呼び込むことを行っています。
そこで、市ではどのようにして若年層の定着を図ろうとしているのか伺います。
地域の特色を生かしたまちづくりとしましては、農水産品のブランド力向上など、これまで実施してきた事業の拡充のほか、新たな取り組みとして、海軍工廠とともに発展してきた歴史を活用しながら、ハード・ソフト両面において大和ミュージアムを中心に整備し、地域のにぎわいづくり、仕事づくりにつなげていきたいと考えています。
また、新たな事業の創出という観点では、産学官連携による新製品、新技術の開発支援も拡充したいと考えています。
いずれにしても、それぞれの自治体が創意工夫して取り組んでいる中で、呉らしさというものをしっかりと生かした事業を展開することによって若年層の定着に結びつけていきたいと考えています。
かつて、本市には家庭教育係がありました。全国どこにもない画期的で、先進国が抱えるあらゆる問題を解決する素晴らしい取り組みでしたが、機構改革で消滅しました。係の設置と廃止の経緯を伺います。
家庭教育係は、子育てに関する相談への受け皿や保護者同士が交流できる場の提供など、保護者を支援する目的で、平成13年4月に教育委員会生涯学習課に設置しました。しかし、家庭教育は、子どもの成長段階に応じて行われるもので、福祉部門などとも横断的にかかわっていく必要が強くなってきたため、教育委員会の一係で業務を行うのは限界が出てきたこともあり、平成17年4月の機構改革で家庭教育係を廃止しました。その際、係の業務の一部を福祉保健部に移管するとともに、教育相談、保護者向け講座などの業務は教育委員会で行うこととしました。教育委員会での業務は、現在、文化スポーツ部文化振興課が引き継いでいます。
現在、家庭教育支援条例を制定した県が四つ、市が一つあります。本市も、同様に条例を制定して、家庭教育推進を図るべきだと思いますが、市の考えを伺います。
条例を制定している県、市の各条例の構成は、基本理念、保護者や学校等の役割など、理念的、規範的宣言といった傾向があります。現時点では、家庭が抱えている問題の解決には、経済的支援や就業支援の方が現実的であると考えています。今後、他自治体の動向を見守っていきます。
広島県の子どもの貧困率が14.9%という新聞報道がありましたが、呉市においても18歳未満の子どもの貧困率、ひとり親世帯の貧困率、国民健康保険未加入で医療機関にかかれない子どもの数、生活保護世帯の高校進学率、高校中退率などの実態調査を行い、そこから数値目標を掲げて施策につなげていく必要があると考えています。これらの数字をどのように把握されていますか。
呉市における生活保護世帯の子どもの高校進学率は、平成27年度実績で86.8%です。高校中退率、大学進学率、就職率については、状況自体は把握しているのですが、数字の集計をしていません。今後、生活保護世帯において、こうした数値についても調査集計していきます。
横浜市や足立区などでは、子どもの貧困対策に関する計画の策定が行われています。本市においても計画の策定が必要だと思うのですが、市の考えを伺います。
子どもの貧困対策については、現状、呉市子ども・子育て支援事業計画の中に、重点施策として挙げており、まずは、これをしっかりやっていくことが第一だと思います。私たちも子どもの貧困をなくす気持ちは全く同じです。教育委員会をはじめとした各部局としっかり連携しながら、一人一人の家庭状況に合った子どもの貧困対策に取り組んでいきたいと考えています。
日新製鋼の子会社化に伴い、産業部を中心として立ち上げられた対策チームの目的を伺います。
日新製鋼が子会社化されることにより、雇用を含め、本市経済に与える影響を注視する必要があります。
そのため、対策チームでは雇用情報、本市経済に関する情報の収集、課題の整理を行い、的確な対応を図ることとしています。
また、県、ハローワークなどの関係機関と連携を図りながら情報の分析を行いたいと考えています。
市が行う対策には日新製鋼だけではなく、関連企業も含んでいるのかどうかを伺います。
また、関連企業とも十分な話し合いを行い、子会社化を中止するよう求める必要があると考えますが、市の所見を伺います。
関連企業には多くの地元企業があるため、必要な対策を講じることができるよう情報収集に努めていきたいと考えています。
また、子会社化は、企業体としての競争力強化、国際競争を勝ち抜くための企業判断と考えていますので、市として地域経済の影響を最小限にとどめるため、緊張感を持って的確な対応を図ることに尽きると考えています。