風水害に備えましょう
1 風水害をもたらす主なもの
(1) 集中豪雨
集中豪雨とは
集中豪雨とは,
(1)狭い地域に, (2)短時間に, (3)数百ミリという
多量の雨が不意に襲ってくることをいいます。
その集中豪雨が最も発生しやすいのは,梅雨の末期です。本州一帯に停滞している梅雨前線に,南から湿った空気が舌状に多量に運び込まれてくると,それが前線を刺激して局地的に大雨が降り大災害が発生することもまれではありません。
集中豪雨と避難対策
6月末~7月末,または8月末~9月末にかけての前線ができやすい時期にはつとめて早く気象情報を知るようにすることが大切です。大雨や洪水の注意報,警報が出たら,集中豪雨の起こり得る場合を考え,避難対策を考えましょう。
雨の降り方にも,梅雨期や台風襲来時に雷が鳴ったり,どしゃぶりの雨が続くようなときは,場所によっては,災害が発生することが多いので注意が必要です。
避難の時期を逃さないためにも,自分の住んでいるところが,どのくらいの雨で危険になるかをあらかじめ知っておかなければなりません。
危険雨量の目安は,空缶にたまった雨が2~3時間のうちに深さ15センチもあれば集中豪雨といえます。すぐ避難の準備をしましょう。
水害から身を守るための最も大切な心構えは,いかにはやく危険を察知して,早く避難するかということです。
1時間雨量が,20~30ミリになるとがけ崩れの危険があります。
(2) 台風
台風とは
毎年,日本のどこかに台風が襲来して,各地に暴風,大雨や洪水による被害を引き起こしています。
南洋でできた熱帯低気圧が強くなって,中心付近の最大風速が毎秒17.2メートル以上になったものを台風と呼びます。
台風は,その年にできた順番に番号を付けて呼びます。しかし,大きな災害を起こした台風には特別の名称を付けます。
たとえば,昭和20年9月17日に呉市に大きな被害を引き起こした台風は16号台風ですが「枕崎台風」という特別の名称が付けられています。
台風の発生と上陸数
台風は,30年間の平均では,毎年約27個が発生します。日本にはそのうち約3個が上陸します。
上陸しないが,日本に接近した台風を合めると,毎年5~6個が日本に影響を与え,被害をもたらしています。
台風と災害
台風は,いろいろな災害を引き起こします。
暴風,豪雨,地滑り,土石流,洪水,高潮などです。 その被害は,主に台風に伴う暴風と大雨の強さによって決まります。
また,この暴風雨の程度は,台風の強さ,進行速度や経路などによって違ってきます。
台風が接近してきたとき,風向きが時計の針の回転する方向と同じに変われば,台風は自分の西側から北側へ通っており,風雨の強い区域へ入ることになります。 反対に時計と逆回りに変われば,台風は南側から東側へ通っておリ,風雨の弱い区域に入ることになります。
2 風水害の種類
(1) 土砂災害
山崩れ,がけ崩れ(斜面崩壊)
自然の山腹が崩れるのを山崩れといい,山腹を削ってつくったがけが崩れるのをがけ崩れといいます。
これらを総称して斜面崩壊といいます。
がけ崩れなどは,降雨・地震などの誘因と地形・地質・植生などの素因とが複雑に絡み合って発生します。
斜面の土・石などが,主として重力の作用によってはがれ落ちたり,転落したりして起こります。
土石流
鉄砲水,山津波とも呼ばれる土石流は,谷筋や渓谷沿いに多量の土石と水が混合して,かゆ状になった大規模な流れです。
局地的な集中豪雨が誘因となって起こり,この流れの先端は高さ数メートルの壁となってすべてのものを押し流してしまう,恐ろしいものです。
地滑り
地滑りとは,斜面に降った雨が表土層にしみ込んで,その下の岩盤に沿って流れる減少で,雨量が多くなると,表層土に水がたまり,それがある限度を越えると表層土が岩盤の上を滑るように落ちていく現象をいいます。
(2) 洪水
河川などの水位が高いときに水が河川から氾濫した結果起こる災害を洪水と呼びます。
洪水には,河道から水があふれだしたり,堤防が切れたりして起こる外水氾濫と,堤内地の排水不良から起こる内水氾監とがあります。
(3) 高潮
台風がくると,奥深く入り込んだ湾では高潮が起こりやすいくなります。
台風によって高潮が起こるのは,主に南向きの湾でその西側を台風が北上した時です。
高潮の程度は,台風の強さ,速度,通過時の潮位などが関係してきます。
高潮を起こす原因は,気圧の低下による海面の盛り上がり,風による海水の吹きよせです。
台風が襲来して高潮が満潮時にぶつかると,潮位が非常に高くなり,さらに暴風雨によってできた大きな波浪も加わり堤防を壊し,海岸の低地などにものすごい勢いで海水が流れ込み大被害を与えます。
(4) 風害
台風に伴う風は思いもかけない災害をもたらします。
台風域内の最大風速は,中心から40~50キロメートルのところに現れ,中心気圧が低いほど暴風雨も強いのが普通です。
もちろん個々の台風は,その発生条件,発達段階などによリ風速分布はいろいろで,上陸後は分布が乱れます。
一般に進行方向の右半円の風速は特に強いといわれています。
台風に伴う風は,強くなったり,弱くなったりその変化が大きく,瞬間的にはものすごく強い風が吹くこともあります。
台風の風が怖いのは,一つにはこの瞬間の強い風が大きな被害を起こすからです。
もう一つ,この風の怖い点は,共振れです。
風を受けた建物は振動します。
風の強弱の周期と建物の振動の周期とが一致すると風自体があまリ強くなくとも,共振れのため滅しい振動が建物に起こり,ついに倒壊することになります。
3 こんな注意で風・水害の被害を最小に
(1) こんな雨が降ったら要注意(集中豪雨,長雨など)
雨量は,水平な地面に降った雨の量を流れずにそのままたまったものとしてその深さをミリで表わします。
1時間の雨量と降り方
1時間の雨量
- 5~10ミリ:雨の音がよく聞こえたちまち水たまりができる。
- 10~20ミリ:雨の音が大きく地面一帯に水たまりができる
- 20~30ミリ:下水があふれ床下に水が流れ込む。小川が氾濫してがけくずれの危険がある。
- 30ミリ以上:滝のような激しい雨。危険地帯では避難の体制をとる。
こんな「がけ」が危ない
呉市は,その大半が山林で,しかもその傾斜度は災害の発生しやすい38度内外のものです。
地質のほとんどが花こう岩で形成されているため,たいへん崩れやすいものです。
次のような場所は注意しましょう。
- 高さが5メートル以上ある場所。
- がけの上に水が集まりやすい場所。
- 斜面にでこぼこがあり,上部がおおいかぶさっている場所。
- 表土の厚いがけで岩が土のようにぼろぼろになっている場所。
- わき水のある場所。
- がけの角度が30度以上ある場所。
- 岩盤の上に厚さ3メートル以上のやわらかい表土がある場所。
がけ崩れの前兆
がけ崩れや土石流は,瞬時に起こります。
手遅れにならないためにも,周りをよく観察することが大切です。
少しでも,普段と変わった現象を発見したら早めに避難しましょう。
- 山鳴り,地響きがする。
- わき水が急に濁る。
- 斜面に亀裂ができる。
- 立木の根が切れる音がする。
- いつも水の出ない斜面から水が吹き出す。
- 小崩壊が断続的に起こる。
- 吹き出してきたわき水が5分程度で止まる。
- 斜面がふくらむ。
- 小石がパラパラ落ちはじめる。
雨による被害を最小にするには
浸水の恐れがあるときは,次のことに注意し,2階があればできるだけ2階へ移しましよう。
- 畳は高い台の上に積み重ねる。
- タンスは引き出しを抜いて高い所に置く。
- 押入の下段のものはできるだけ上段へ移す。
- ガスの元栓は閉め,電気も電源を必ず切っておく。
- 飲料水も高い所へ置く。
- 慌てないように,非常持ち出し品の準備と点検をしておく。
- 平屋の揚合は高い台を利用するか,押入の上段を利用します。
「降水量とがけ崩れ」について
この図は,降水量とがけ崩れの発生の関係の一例を示しています。
3時間から4時間を周期として,こやみになってはまた強く降るという,このような雨の降り方が,私たちの自主避難を遅らせるというケースもあります。
また,このように雨のピークがすぎた後に,がけ崩れが発生するという場合もあるので安心はできません。
(2) 台風の規模から被害度を知ろう(風による被害)
風速が倍になると,風圧はなんと4倍にもなります。
しかも,瞬間風速は発表される最大風速の1.5倍になります。台風の規模を知って,被害の程度を予測し,万全の対策を立てましょう。
台風は,突然襲ってくることはありませんが,急に速度や進路が変化するので,常に最新の気象情報に注意しておきましょう。
また,次のことに注意して被害を最小限に食い止めましょう。
- 家の中に風を入れない。
- 避難口を確保する場合は,できるだけ風の弱い北側で開けやすい引き戸がよい。
- 強風下での外出はしない。
- 火の使用は最小限にして,火の元は厳重にチェックします。
- 雨戸のない窓で,風当たりの強い所は,ビニールテープをはり補強しまする。
- 雨戸のない窓や戸には,家の中から大型の家具を置く方法もあります。
4 風水害からの避難のポイント
山崩れ,がけ崩れ,高潮,河川のはん濫など,台風や集中豪雨による災害は,あっという間に襲ってきます。
「このくらいなら・・・」という,ちょっとした油断や家具への執着が避難を遅らせ,大事を招いたケースもたくさんあリます。
危険が予測されたら,,たとえ無駄になっても,早めに避難することが大切です。
避難には次の点に気をつけましょう。
(1) 安全な避難方法
- 避難勧告や避難指示があったら,いつでも避難できるように準備しておく。
- 避難するときは,火の始末や戸締まりを確実にする。電気製品は電源を切り,ガスは元栓を閉める。
- 避難勧告・避難指示はサイレン,半鐘,広報車などでおこなわれるので,よく注意しておく。
- たれ下がった電線には絶対触れないように気をつける。
- 携帯品は必要最小限とし,背負うようにする。夜間には,懐中電灯をできるだけ身につけておく。
- 避難が遅れないように気をつけるとともに,地域のリーダーや防災関係者の指示に従って,家族や隣近所などある程度まとまって避難することが大切。自分ひとりだけの判断で単独行動をするのがいちばん危険。
- 避難の際は,がけ下,壊れそうな塀ぎわなどはできるだけ避ける。
- やむを得ず,流水している場所や浸水地域から避難するときは,水にさらわれないようにお互いに手をつなぐか,ロープやさおなどでつながって歩く。流水や冠水の中で人が歩ける深さは,男性で70センチ,女性で50センチといわれる。
- すでに外に出るのが危険な場合は,2階の斜面とは反対側の部屋に避難する(垂直避難)などの手段を考える。
(2) こんな身じたくと準備が必要
暴風雨の中を行動するためには,身じたくと避難の準備はしっかりしなけれぱなりません。
身じたく
- 身軽な服装で。
- 持ち物は最小限に,必要以上の物は持たないように。
- 非常持ち出し品は,リュックサックに入れ,両手は空けておく。
- 夜間の場合には懐中電灯もビニルで包んで,ひもでつるす。
- ロープは暗がりでもすぐ取り出せるようにしておく。
- 女性は,スカートをやめ,ズボンを着用する。
- 手には軍手を着用する。素手は禁物。
- 履物は,丈夫で底の厚いものがよい。長靴は水が入ると歩きにくい。
非常持ち出し品の準備
生活の基本に関わるようなこと,飲む・食べる・寝る・防寒・ケガの治療などを主にして必要最小限に考えることが大切です。
- 水,食料を用意最低3日分は用意する。
- 家族構成に合わせて用意する。
- 食料,薬,乾電池などは,年に1回新しいものに取り替えるように心掛ける。
- 赤ちゃんのいる家庭は,ミルクも用意する。乳幼児,老人のことも考える。また,生理用品も忘れずに。ペットのことも考えて
5 風雨に備えて我が家をチェック
台風や集中豪雨に備えて,まず,あなたの家の周りの点検からはじめましょう。
屋根・雨どい・窓・外壁と順に点検していき,ひび割れや壊れた所がないかを念入りにチェックします。
屋根など高い所に昇るときは,くれぐれも慎重に,あまり無理をしないように心がけましょう。
塀や庭木などの点検修理も忘れないように。
(1) 屋根
瓦が飛ばされると軽くなって,屋根全体が飛ばされることがあります。
瓦のひび・割れ・ずれ・はずれなどを点検し,しっくいなどで修理しておきます。
トタン屋根は強風でめくれることがあるので,釘で固定して補修します。
(2) ひさし
強く風圧がかかるところで,はずれ,ゆがみ,破損などがないか点検し補強します。
(3) 雨どい
雨が正常に流れるように,落葉・土・砂などのつまりを取り除きます。
継ぎ目の外れ,といの傾斜を正しく修正し,さび・塗装のはがれ・穴などを防水テープとペンキで補修しておきます。
(4) 窓ガラス
窓枠のがたつき,外れなどを直します。
ひびの入っているガラスは交換しておきます。
強風に備えるときは,外側から板でふさぐか,ガラス面にビニルテープを貼っておきます。
(5) ブロック塀
ひび割れたり,壊れたところをモルタルやインスタントセメントで修理します。
(6) 板塀
古くなった板塀は,羽目板の釘が浮いています。
いたみの激しい羽目板を取り替えながら浮いた釘を打ち直しておきます。
(7) 壁
モルタルの壁は亀裂にコーキング剤などを注入して補修します。
何年かに一度はモルタルの吹き付けをしておいたらよいでしょう。
(8) 溝,水路
溝や水路はこまめに掃除し,たまったゴミや泥を取り除いておきます。
特に壊れているところは補修して,がけに雨水が流れないようにします。
6 風水害の後始末は?
風水害の被害を受けていちばん問題になるのが衛生面です。住居や生活環境すぺてが汚染されて不潔になるため,食中毒や伝染病が発生しやすくなります。
風水害の後始末には,次のことを心がけましょう。
- 水をかぶった家は,開け広げ通風をよくして乾繰させる。
- 浸水で汚れた床,柱,腰板は早く水洗いし,消毒薬などで消毒しておく。
- 水に浸かった畳は腐るので取り替える。
- 生水は飲まない。水道水でも煮沸する。
- 水をかぶった食品は絶対に食べない。
- 家の周りの点検をする。
7 おわりに
呉布の自然的条件や地域の特性を考えると,最も発生する確立の高い災害として,台風や大雨による風水害があげられます。
地質はそのほとんどが花こう岩系統のもので,たいへん風化しやすく,接着力がなく崩れやすいものです。
また,地形も複雑で,年間雨量が比較的少ないにもかかわらず,梅雨前線や台風による風水害や高潮災害がしばしば起こっています。
中でも,昭和42年7月豪雨では山がけ崩れが1,251ヵ所と,近年の呉市の水災歴のなかで最も多く発生しました。
私たちの住む呉市が山崩れ・がけ崩れ・土石流などの土砂災害に弱いという一面を昭和42年7月豪雨は物語っています。