平成29年度 産業建設委員会行政視察報告
期日
平成29年10月11日(水曜日)~13日(金曜日)
視察委員
小田晃士朗(委員長),中原明夫(副委員長), 阪井昌行, 沖田範彦, 平岡正人, 片岡慶行, 北川一清, 土井正純
視察都市
月 日 | 視 察 先 | 調 査 事 項 | ||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
10月11日(水曜日) | 石川県金沢市 | 観光振興について | ||||||||||||||||||||||||||||||
10月12日(木曜日) | 兵庫県姫路市 | |||||||||||||||||||||||||||||||
10月13日(金曜日) |
ネスタリゾート神戸 (兵庫県三木市) |
ネスタリゾート神戸の運営について |
視察目的
呉市の人口は減少傾向が続いているが,観光の振興は減少した人口を交流人口で補うという重要な意味を持っており,呉市への観光客を増大させていくことができれば,産業の規模も拡大し,経済の活性化につながることから,当委員会では,「観光振興について」を所管事務調査項目とし,調査研究を行っている。
呉市の観光振興にはさまざまな課題があるが,そのうち,滞在型観光の推進,インバウンドの推進,グリーンピアせとうちの再生の3点について,これから重点的に議論を進めていくため,先進事例を調査した。
石川県金沢市
(1)調査内容
金沢市では,平成27年3月の北陸新幹線開業により,国内外から多くの観光客が訪れているが,東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け,市を取り巻く環境や情勢はさらに大きく変化すると見込まれていることから,平成28年度から平成32年度までの5年間で取り組むべき戦略として,「金沢市観光戦略プラン2016」を策定し,さらなる誘客促進や外国人観光客の受入体制整備等に取り組むこととしている。金沢の魅力あるコンテンツの創造,インバウンドの推進,MICE等の推進などの7項目を基本戦略とし,観光施策を推進している。
金沢市には1583年に前田利家公が金沢城に入り,百万石の城下町として繁栄した歴史があり,代々前田家は学術や文化を尊重したことにより,金沢箔や加賀友禅などの伝統工芸や加賀宝生などの伝統芸能が発展したが,市では,そのような伝統文化を積極的に観光施策に生かしていこうとしている。また,北陸新幹線の開業は大きく,市内主要観光施設の入場者数は開業前に比べ約 1.5倍にふえ,平成28年における兼六園の外国人入場者数は35万 6,000人となっている。
滞在型観光の推進については,JRなどとタイアップしたツアー造成,開湯1300年の歴史のある湯涌温泉への誘客,文化施設の夜間開館と週末イベントを開催するナイトミュージアムなどを行っている。
インバウンドの推進については,民間事業者による外国人旅行者の受け入れのための言語表記,通信環境整備に対する助成,特区制度を活用した特例通訳案内士の育成及び活用,日本の歴史や文化を体験したいというニーズの高いヨーロッパの方をターゲットとした体験プログラムの造成などを行っている。また,観光庁から訪日外国人旅行者を地方へ誘客するモデルケースを形成しようとする観光立国ショーケースに選定され,関係省庁による支援も行われている。
さらに,一般社団法人金沢市観光協会が中心となり,官民が連携した観光地域づくりを目指す金沢版DMO(観光マネジメント組織)の設立に取り組んでおり,着地型商品の開発も進めている。
(2)質疑応答
庁内での組織間の連携,特例通訳案内士などの人材育成,修学旅行誘致の状況,台湾インバウンド推進のためのシティーセールス,観光協会の運営体制,クルーズ船の入港状況などについて質疑が行われた。
(3)呉市での展開の可能性
金沢市では観光施策を体系的に整理した観光戦略プランを策定し,金沢の観光が目指す指針としているが,呉市においても施策の推進に当たっては戦略的なプランの策定について検討する必要がある。また,官民を挙げての観光施策のさらなる推進に向けては,行政だけでは限界があることから施策の推進を補完する組織(観光協会,観光コンベンションビューロー等)の立ち上げについても検討すべきである。
滞在型観光の推進には,朝及び夜型観光を充実させるための施設の夜間公開やイベント開催などを検討していくことが必要であり,インバウンドの推進に向けては観光情報の多言語化等受け入れ環境の整備に早急に取り組むべきである。
兵庫県姫路市
(1)調査内容
姫路市では,姫路城を中心とした多様な観光資源の活用,海外からの観光客誘致,来訪者の滞在時間の延長などの課題に向き合い,東京オリンピック・パラリンピック後の状況を見据えた施策を展開するため,平成29年度から平成33年度までの5年間を計画期間とする「姫路市観光戦略プラン」を策定し,総入込客数年間 1,000万人以上などの具体的数値目標を掲げている。「観光を通して,愛し愛されるまち 姫路」を基本テーマに,観光客の受け入れ環境の充実,滞在型観光の推進,インバウンド観光の推進,MICEの推進を基本政策とし,観光施策を推進している。
施策の推進は,主に世界遺産である姫路城を中心に市の魅力を世界発信していくシティプロモーション推進課,学会,会議等の誘致や建設予定のコンベンション施設の活用を検討するMICE推進課,観光客の受け入れ環境の整備や誘致などを推進する観光振興課の3課体制で行っている。また,官民で組織する公益社団法人姫路観光コンベンションビューローが,行政では限界のある民間情報の紹介といった事業を補完している。
滞在型観光の推進については,もともとものづくりのまちであることからビジネスホテルが多いという現状があるが,滞在時間を延長させ,宿泊してもらえるよう姫路城において夜間公開やプロジェクションマッピングを行ったり,播磨圏域での連携による広域観光を推進したりしている。
インバウンドの推進については,多言語パンフレット(10カ国語,姫路城は20カ国語)の作成や案内サインの整備,東京オリンピック・パラリンピックに向けたフランス柔道チームの事前合宿誘致,外国人の嗜好に合わせたプログラムの紹介,PRなどを行っている。
MICEの推進を観光施策の一つに位置づけ,姫路城等の観光をセットにしたコンベンション誘致にも積極的に取り組むこととしている。
(2)質疑応答
滞在型観光への移行に向けた取り組み,コンベンション施設の現状と課題,修学旅行誘致の状況,外国人観光客への対応などについて質疑が行われた。
(3)呉市での展開の可能性
姫路市においても観光施策を体系的に整理した観光戦略プランを策定し,姫路城を中心とした市の歴史や文化のPRを積極的に行っているが,呉市においても施策の推進に当たっては戦略的なプランの策定について検討する必要がある。また,官民を挙げての観光施策のさらなる推進に向けては,行政だけでは限界があることから施策の推進を補完する組織(観光協会,観光コンベンションビューロー等)の立ち上げについても検討すべきである。
滞在型観光の推進には,朝及び夜型観光を充実させるための施設の夜間公開やイベント開催などを検討していくことが必要であり,インバウンドの推進に向けては観光情報の多言語化等受け入れ環境の整備に早急に取り組むべきである。
ネスタリゾート神戸
(1)調査内容
昭和55年7月に開業したグリーンピア三木は,平成17年12月に兵庫県が年金資金運用基金から取得,運営事業者と10年間の賃貸借契約を締結し,施設運営をさせていたが,兵庫県は平成27年12月に契約が満了することから,ホテル及び温泉機能の維持を必須とする企画提案を募集,スポーツ施設,温浴施設,遊技場等を運営する株式会社延田エンタープライズへ土地,建物等を約11億円で売却した。その後,施設の引き渡し,リニューアル等を経て,平成28年7月にホテル,プール,グランピングバーベキュー施設等を備えたネスタリゾート神戸としてオープンした。
施設のリニューアルは3段階で行っており,平成30年春のグランドオープンから1年間の集客目標を 200万人としている。オープン当初はホテル,プール,グランピングバーベキュー施設のみの営業であったが,その後,プロジェクションマッピングが好評のイルミネーション施設,日帰り温浴施設,アスレチック施設などをオープンさせている。
ホテルはグリーンピア三木時代の古い建物であったので,風呂がない部屋にユニットバスを設置したり,部屋の壁をくりぬいて大部屋に改装したりしたが,広い部屋が少ないことから,ベランダに天然温泉を完備し,ペット同伴も可能な高級感のある宿泊棟を新たに建設した。
プール,グランピングバーベキュー施設は集客の柱となっており,プールは今年,隣接するスケートリンク跡に西日本最大級のウオータースライダーを設置,一日最大で 9,600名,期間中約20万人の来場があった。グランピングは,快適かつぜいたくにアウトドアを楽しむリゾートスタイルとして注目されているが,施設内では,ぜいたくなリビング空間を楽しめ,連結も可能なパーティーテント,オープンデッキテラスつきのグランプキャビン,エアコン,キッチン,トイレ,シャワールームつきのプレミアムテントなどでさまざまなスタイルのアウトドアを楽しむことができる。
約67万坪という広い施設内は無料のオープンバスが20分間隔で運行し,各施設を循環している。
山陽自動車道三木東ICから約2分という好立地を生かし,主に京都,大阪,神戸などの関西圏の家族連れをターゲットに展開をしているが,今後は修学旅行生,企業のセミナーなどの誘致,インバウンドを推進する国の施策に呼応し,中国などアジアからの観光客誘致にも取り組んでいくこととしている。
(2)質疑応答
施設を購入した経緯,雇用など地元経済への影響,ホテルの稼働率や利用者の客層,ゴルフプランなどの商品造成,集客を図るための大手旅行代理店への営業などについて質疑が行われた。
(3)呉市での展開の可能性
グリーンピアせとうちは,現在,株式会社休暇村サービスが来年8月末までの臨時的な指定管理を行っている。今後のあり方については,ホテル事業の継続を必須とした売却を基本的な方針としており,年度内に公募手続を開始,早期に売却候補者を決定することとなっている。
ネスタリゾート神戸には背後に関西経済圏があることから,リニューアルには積極的な投資を行っていたが,グリーンピアせとうちではそこまでの投資は望めないので,公募型プロポーザルによる提案の選定を行うのであれば,ネスタリゾート神戸のように広い施設内に循環バスを走らせたり,流行のアウトドア施設や近隣にはない大規模なウオータースライダーをプールに設置したりするなど,何を売りにしていくのかという部分をしっかり見きわめていく必要がある。民間活力が十分発揮でき,市東部の観光拠点として再生できるような提案が生まれるよう検討をいただきたい。