平成27年度 産業建設委員会行政視察報告
期日
平成28年1月14日(木曜日)~16日(土曜日)
視察委員
上村臣男(委員長),井手畑隆政(副委員長),谷恵介,林敏夫,沖田範彦,岡崎源太朗,平岡正人,小田晃士朗
視察都市
月 日 | 視 察 先 | 調 査 事 項 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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1月14日(木曜日) | 福岡県久留米市 |
(1)移住・定住促進について |
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1月15日(金曜日) | 熊本県上天草市 |
(1)移住・定住促進について (2)地域産品販売拠点施設について |
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1月15日(金曜日) | 熊本県天草市 | (1)移住・定住促進について (2)二地域就労促進事業について |
福岡県久留米市
(1)移住・定住促進
久留米市では定住促進戦略を掲げ,さまざまな移住・定住促進策を実施しており,自然動態のマイナスを社会動態がカバーする形で,平成25年5月から人口が増加に転じている。
久留米市転入ファミリー定住奨励補助金は,市内に住宅を取得し,転入した人の定住を奨励するための補助金で,基本額を10万円とし,中学生以下の子供が同居する場合,三大都市圏及び福岡市から転入した場合,三世代が市内に住む場合にそれぞれ加算される。
また,九州新幹線の開通によって交通アクセスが向上し,福岡市,熊本市ともに通勤圏内となった。これら近隣都市圏で働く若い世代の移住者をふやすため,新幹線を含め,鉄道で通勤する転入者に対して,最大3年間の通勤定期利用補助金を交付している。
そのほか,1年以上居住していない空き家を購入してリフォームを行う場合に補助を行う空き家活用リフォーム助成は,空き家対策としてだけでなく,移住者支援にもつながる施策となっている。
また,久留米市にUターンした若者5人が「久留米市移住計画」という団体をつくり,都市部でトークイベントを行ったり,久留米市の見学ツアーを行うなど,自主的に活動を行っている。この団体に対する市の支援は,東京などで行われる定住フェア参加の旅費程度で,イベントなどは団体みずからが協賛金を募って活動しており,市民主導で移住者をふやすための積極的な取り組みを行っているところは,注目すべき点である。
(2)久留米まち旅博覧会
平成23年3月の九州新幹線開業を前に,観光のキラーコンテンツとなるようなものがないままでは,素通りされるだけの町になるという危機感から市民協働の実行委員会を立ち上げ,地域資源を生かした体験交流型の観光プログラム「まち旅」を集めた,久留米まち旅博覧会をいうイベントを実施している。
プログラム数は平成20年度の事業開始から年々増加し,平成27年度は80プログラムを数え,予約率は 100%を超えている。
「まち旅」は,黙っていても人が来るような観光資源をないものねだりをするのではなく,地域資源のあるもの探しをコンセプトに市民自らが企画している。
例えば,お寺での修行体験はそのお寺の僧侶が,陸上自衛隊幹部候補生学校の見学は自衛官が,伝統工芸の体験は職人が,農家で野菜を使った料理づくりは生産者が,それぞれ市民みずからが企画し,参加者のもてなしも市民みずからが行う。
この事業による成果は,交流人口の拡大,久留米市のイメージアップ及び認知度アップのほか,市民みずからが久留米のよさや地域資源を再発見することにあるということである。
また,「まち旅」で地域の伝統工芸である和傘づくりを体験し,それを生業にしたいと感化された若者が技術習得のため移住したという実績もあり,今後,定住促進策としても期待されている。
熊本県上天草市
(1)移住・定住促進
上天草市では,総合企画部企画政策課内に移住相談窓口を設置し,専任の移住相談アドバイザーを1名配置し,移住に関する相談をワンストップで行っている。
移住相談アドバイザーは,移住を検討する人からのさまざまな相談に対応するほか,先輩移住者との意見交換会を開催したり,居住物件の見学にも同行している。
また,移住してきた人からの相談にも応じ,自治会長へあいさつに同行したり,移住者交流会や市内見学会を実施するなど,きめ細かなアフターフォローを行っている。
移住相談アドバイザーは自身も移住者であり,移住者だからこそできる,移住者目線に立った活動が功を奏し,平成24年以降,64名が市外から移住している。
そのほか,田舎暮らし体験プランを提供しており,3泊程度のショートステイは市内のホテルに宿泊し,最大5カ月の滞在が可能なミドルステイでは,市の所有するバンガローをキャンプのオフシーズンに利用している。
また,移住を支援する認定NPO法人ふるさと回帰支援センターに登録し,センターが主催する定住フェアなどに参加するほか,センターのホームページにおいて積極的な情報発信を行っている。
若い人はインターネットの移住専門サイトを見て移住先を検討することが多いため,こういったツールを利用することは非常に効果的であるということであった。
(2)地域産品販売拠点施設
道の駅さんぱーるは,平成12年に地域産品を販売する観光物産館としてオープンし,平成27年4月に道の駅に認定された施設で,年間来客数約56万人,売り上げは7億円を超える,上天草市の1次産業者にとって大きな販売拠点である。
この施設は市の指定管理施設で,第三セクターが指定管理者として運営している。
地域産品の販売に当たっては,市内の生産者と指定管理者がつくる出荷協議会において商品の出荷量や陳列日数を細かく定めているが,価格は生産者自身が自由に設定できることとなっている。
指定管理者は,施設の運営だけでなく,生産者の所得向上を目指して販路拡大のための営業活動や地域産品のブランド化を進めており,地元で生産される湯島大根は,幻の大根としてブランド化に成功し,東京では1本 700円以上で販売されているということである。
また,6次産業化にも積極的に取り組んでおり,併設されている農林水産物加工開発研究センターで市民が加工品の開発を行い,商品化されたものは集客力のある道の駅で販売するというよい流れができている。
熊本県天草市
(1)移住・定住促進
天草市では,地域資源を活用して新たな産業を起こすためには,市外の住民の視点やアイデアが重要であるという観点から,転入から6カ月以内に起業した人に対して移住経費を補助する移住者起業支援事業補助金を初め,市外で起業している人材を誘致するための起業家移住支援事業,市内の中小企業等が経営上必要とする人材を誘致するためのUIターン者マッチング事業など,産業振興策としての移住者支援が充実している。
加えて,専業農家を育成する新規就農者支援事業のほか,年間 100万円程度の農業による収入を目指す半農半X農家,いわゆる兼業農家を希望している移住者に対するIJU者就農支援事業など,就農を希望する移住者に対して,それぞれのニーズに合わせたきめ細かい支援を行っている。
また,住宅支援策は,空き家バンク登録物件に3年以上居住する意思がある移住者に対し,空き家の改修や家財道具の処分などに要する経費を補助する空き家活用事業を実施しており,久留米市と同様,空き家対策としても有効な施策となっている。なお,固定資産税の納税通知書に,空き家活用事業を含め,空き家バンク登録を促す案内を同封したところ問い合わせが殺到し,登録件数が一気にふえたということである。
そのほか,上天草市と同様,移住者を移住定住コーディネーターとして雇用しており,みずからの経験を生かして,移住希望者及び移住者からの相談に対応したり,移住者交流会を開催している。
(2)二地域就労促進事業
二地域就労促進事業は,市外企業の社員が持つノウハウを地域資源と結びつけ,地元企業の事業の高度化や販路拡大などを目指す,これまでの企業誘致とは異なる,人の誘致を行う事業である。
例えば,地域資源や観光資源のブランド化を考える天草市と,地域貢献によるイメージアップや雇用の確保を考える航空会社のANAが協働し,ANA出身の元営業職であった社員と元キャビンアテンダントであった社員2名が,それぞれANAで培ったノウハウを生かし,天草宝島戦略マネージャーとして活動している。
そのうち,元営業職の職員は,都市部への農水産物の販路拡大に向けた取り組みや移住のためのモニターツアーを企画し,元キャビンアテンダントの職員は,市内の観光事業者向けの接遇やクレーム対応などのセミナーを行うほか,地域おこし協力隊として天草市の魅力を全国に発信している。
また,冬の生産地を探していた野菜の栽培技術や販路を持つ都市部の企業と,農業に参入したい天草市の自動車部品工場,それぞれのニーズをマッチングすることで,企業双方の事業拡大及び,地域の雇用創出につなげている。