平成28年度 民生委員会行政視察報告
期日
平成28年10月12日(水曜日)~14日(金曜日)
視察委員
岩原昇(委員長),山本良二(副委員長),檜垣美良,久保東,谷本誠一,神田隆彦,土井正純
視察都市
月 日 | 視 察 先 | 調 査 事 項 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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10月12日(水曜日) | 大阪府池田市 |
多様な保育ニーズへの対応について |
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10月13日(木曜日) | 石川県小松市 | |||||||||||||||||||||||||||||||
10月14日(金曜日) | 大阪府高槻市 |
視察目的
当委員会では,「子育て支援について」を所管事務調査項目とし,「妊娠・出産・子育てにおける負担軽減」を論点に調査研究を行っている。昨今,共働き家庭の増加による保育ニーズの増加及び保育の低年齢化が進んでおり,また,働き方の多様化等による特別保育の必要性も増していることから,その対応策について検討していく必要がある。さらに,全国的に保育を担う人材が不足していることから,人材確保に向けた取り組みについても検討していく必要がある。
大阪府池田市
(1)調査内容
池田市は,「教育日本一, 子ども子育て支援日本一のまち」を目標に,保育施策にも重点的に取り組んでいる。平成28年度は4月時点で初めて待機児童が発生したが,公設民営の待機児童保育ルームを整備し,国基準の待機児童ゼロを達成することができている。公立保育所については,平成13年から民営化に取り組んでいるが,公立保育所は地域のセーフティーネットの役割を果たしており,また,50歳以上の保育士が全体の約48%,非正規職員が約56%を占めていることから,今後どのように運営していくかが課題となっている。
送迎保育ステーション事業は,市の中心部では住宅環境の整備が進み,子育て世帯が増加し保育需要が高まる中,郊外の保育所は定員に満たないという状況があり,保育需要の地域間格差を解消するため,平成12年に池田駅前において事業を開始している。その後,平成18年にマンションの開発業者から子育て世帯を呼び込むため,子育て支援施設を設置してほしいという要望があり,場所の寄附を受け,2カ所目の事業を開始した。事業は,朝は送迎保育ステーションで子供を預かり,周辺の指定保育所にバスで送迎,日中は園庭のある保育所で過ごし,夕方は指定保育所から送迎保育ステーションにバスで送迎し,保護者が迎えに来るまで預かるというもので,社会福祉法人,学校法人に委託している。当初は定員に満たない保育所を解消するためであったが,保育需要が高い現状においては,送迎保育を利用することで駅前に集中する保育需要を解消することができ,待機児童解消に大きく貢献している。また,郊外の保育所で伸び伸びと保育ができるということで利用人数も増加傾向にあり,駅前で子供を預けることができるので,保護者のライフスタイルに合った施策となっている。保護者が直接保育所に行く機会が少ないことから,保護者と保育所との信頼関係を築くため,保育所と送迎保育ステーションの職員同士がしっかり連携し,子供の情報などを伝え合う体制をつくることが課題である。今後は,待機児童等の状況に応じて,送迎ルートの変更や増便などを検討する必要があると考えている。
休日保育は,日祝日に仕事のある家庭の子供の保育を確保するため,平成13年より市内の1施設にて委託事業として実施している。市内の保育所に通う児童であれば,1日 3,000円で利用ができ,利用者は年々増加している。日祝日に勤務できる保育士を確保することが課題であるが,働き方の多様化により今後さらに需要はふえていくものと考えており,定員拡大も視野に入れて事業に取り組んでいくこととしている。
(2)質疑応答
送迎保育ステーションにおける利用者負担金や送迎バスの乗車時間及び便数,休日保育における市の負担額などについて質疑が行われた。
(3)呉市での展開の可能性
送迎保育ステーション事業は,市中心部から郊外にある保育所へ送迎することによって入所率の平準化を図ることができ,また,待機児童の解消にもつながる事業である。子供を担任する保育士と保護者の連携をうまくとることができない可能性もあり,顔の見える保育ということでは,直接会って話をすることも必要であり,導入する場合には検討すべき点がある。
休日保育については,保護者の方が日祝日はいつでも休みとは限らず,また,冠婚葬祭などで保育が必要な場合もあることから,導入に向けた検討をすべき事業であると考える。導入に当たっては,市民ニーズを調査するとともに,保育士の確保と勤務体制についても留意する必要がある。
石川県小松市
(1)調査内容
小松市は,平成27年11月に策定された「NEXT10年ビジョン」や他の計画等との整合性を図りながら,「小松市子ども・子育て支援事業計画」に基づき,子供とその保護者に必要な支援を切れ目なく行い,安心して子育てができるまちづくりを進めている。保育施策については保育の量の確保だけでなく,保育の質の向上や多様な保育ニーズへの対応にも取り組んでいる。公立保育所の正規保育士は平成20年度以来,採用がなく,保育士の年齢構成の偏りが出てきているが,今後の採用計画は統廃合・民営化計画の進捗を考慮し対応していくこととしている。また,小松市民病院内で小松市医師会に登録している医療職を対象に夜間保育を週2日実施している。
病児保育は,平成20年に子育て支援施策の一環として小松市民病院内に病児保育ルームを開設,対象は小学生までで,利用料金は1日当たり 2,000円となっている。平成27年度の延べ利用者数は 718人であり,保護者の子育てと就労の両立に対する支援が図られている。保護者が前日までに利用の予約を行うことになっているが,当日の子供の回復具合によってキャンセルになることがあり,キャンセル待ちの予約者への対応が課題となっている。
病後児保育は,市内4カ所の保育所において,病気の回復期で集団保育が困難な期間に,医師の判断のもと,一時的に看護師と保育士が保育を実施しており,体調不良児保育は,市内15カ所の保育所において,通所児童が保育中に微熱を出すなど体調不良となった場合に,保護者が迎えに来るまでの間,一時的に看護師が保育を実施している。小松市の保育所には,児童の健康管理や衛生管理の推進を図ることを目的として看護師が配置されており,その看護師が病後や体調不良の児童の保育を行っている。体調不良児保育については,就労の都合上,すぐに迎えに行くことができない場合もあることから,保護者から大変好評である。
休日保育は,保護者が就労,冠婚葬祭等の理由で日祝日に家庭での保育が困難な児童を保育するため,平成7年より実施しており,平成28年度は5カ所の保育所で実施している。利用料金は1日 2,700円であるが,平日に振替休日をとった場合は徴収していない。他都市と同様に日祝日に勤務する保育士の確保が難しくなっているが,休日保育に対する市民ニーズがあるため,今後も継続していくこととしている。
(2)質疑応答
病児保育における保育士と看護師の配置基準,保育所における看護師配置にかかる経費,休日保育における保育士の確保方法などについて質疑が行われた。
(3)呉市での展開の可能性
小松市の保育所には看護師が配置されており,児童が体調不良となった場合には,その看護師が病後や体調不良の児童の保育を行っているが,保護者がすぐに迎えに行くことができるとは限らないので,このような取り組みは参考にすべきと考える。 休日保育については,保護者の方が日祝日はいつでも休みとは限らず,また,冠婚葬祭などで保育が必要な場合もあることから,導入に向けた検討をすべき事業であると考える。導入に当たっては,市民ニーズを調査するとともに,保育士の確保と勤務体制についても留意する必要がある。
大阪府高槻市
(1)調査内容
高槻市では, 子育て支援を重点施策の一つに位置づけ, 子育てを応援する環境整備を行ってきており, 保育施策に関しては、認可保育所の新設や定員増などを行っている。平成26年12月には転入や育児休業明けなどによる年度途中の保育需要に対応するための市立臨時保育室を開設し, 待機児童解消に取り組んでいる。公立保育所の正規保育士については,職員の世代交代が進み,在職年数が10年未満の職員が半数を超え,保育の質を保持することが難しくなっている。市全体の保育の質を担保するため,地域型保育事業については小規模保育A型のみを公募し, 認可しているが,保育所等はすでに定員を超える入所を行っており,地域型保育事業卒園後の3歳児の受入枠の確保が喫緊の課題となっている。
保育士・保育所支援センターは,待機児童解消施策を推進する中で施設や補助金の整備に加え,保育所等を運営する人材も確保する必要性もあることから,平成26年度より予算化をし,運営を開始した。センターでは,保育所人材の安定的な確保と本市における安全安心な保育の継続を目指すことを目的として,保育士資格を有しながら,保育現場で働いていない潜在保育士などの現場復帰を支援している。再任用保育士を保育士再就職支援コーディネーターとして子ども未来部保育幼稚園総務課の執務室内に配置し, 求人・求職情報に基づいたマッチング業務, 潜在保育士等からのさまざまな相談の受付,情報発信等を行っている。また,おもちゃづくりや子供たちとの遊びを学んだり,保育所見学会などを行ったりする保育士復職支援のためのセミナー開催や,市内の大型ショッピングセンターでの就職相談会の開催なども行っている。平成27年度は 120件の求職票登録があったが,その中で,公立保育所,私立保育所合わせて73件のマッチングがあり,64名の方が保育現場に復帰している。今後は,さらなる潜在保育士の掘り起こしのため,センターの認知度を上げることにも取り組んでいくこととしている。
(2)質疑応答
保育士再就職支援コーディネーターの勤務体制及びセンターの開設時間,市内における保育士等有資格者の把握方法,センターの業務を社会福祉協議会などへの委託事業としない理由などについて質疑が行われた。
(3)呉市での展開の可能性
呉市においても潜在保育士に対する再就職支援セミナーを行い,一定の成果を得ているところであるが,求人情報等の紹介をする機会が余りないのが現状である。保育士不足の解消は全国どこの自治体でも抱えている問題であり,行政が中心となってリードをしていかなければ解決も難しいことから,子育て施設課において相談業務等を行う体制を構築する必要があると考える。