平成30年度 議会運営委員会行政視察報告(副委員長班)
期日
平成30年4月25日(水曜日)~27日(金曜日)
視察委員
林田浩秋(副委員長),藤原 広,岩原 昇,小田晃士朗
視察都市
月 日 | 視 察 先 | 調 査 事 項 | ||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4月25日(水曜日) | 山口県山陽小野田市 | 議会運営・議会改革について | ||||||||||||||||||||||||||||||
4月26日(木曜日) | 大分県大分市 | |||||||||||||||||||||||||||||||
4月27日(金曜日) | 長崎県長崎市 |
山口県山陽小野田市
(1)調査内容
山陽小野田市では、議会運営に関する視察の対応を議会運営委員会の委員が行っている。
予算・決算の審査方法については、2年前まで予算決算常任委員会の9名で行っていたが、全議員が審査にかかわることができるように、昨年10月の改選から議長を除く全議員で行う一般会計予算決算常任委員会を設置した。審査は、総務文教、民生福祉、産業建設、理科大特別委員会の4つの分科会で行っているが、分科会では質疑のみで討論採決が行えない、1日に1分科会しか行えないため、日数がかかるといった課題がある。
また、議会改革について、山陽小野田市では、公開方式による全議員参加型の議会政策討論会を開催している。開催の流れは、会派の代表が議長に対し議題を申し入れ、議会運営委員会で議題を決定し、当日は議長が座長となり議事進行する。 この討論会で出された意見は、各委員会で審査や政策立案し、意見がまとまれば市長(執行機関)に対して政策提言を行っている。そのほか、議会における政策形成に反映される。
市民との意見交換については、議会市民懇談会、議会カフェといった意見交換会が設置されている。まず、議会市民懇談会は、市内の団体等が特定のテーマについて開催の要望を提出し、議長が指示し開催される。これまで、「保育所運営上の諸問題」など地域での大きな課題が発生した際には多く開催されたが、現在は減少傾向にある。また、予算が確定した後に開催した際は、順番が逆ではないかとの市民意見も出されている。議会カフェは、議会報告会の人数が減少しマンネリ化してきたため、他市の事例を参考にカフェ形式にしてはどうかということで立ち上げた。リラックスした雰囲気で行えるように、お茶やコーヒーを飲みながらテーブルを囲み、意見交換が活発に行われるよう工夫されている。
(2)質疑応答
予算決算の分科会方式のメリットについては、全議員が分科会に属し審査を深めることができ、今まで予算審査を行えなかった委員のジレンマが解消されたとのことだった。
市民懇談会・報告会といった同じような意見交換会を行う必要性については、それぞれ内容は異なり、参加者の減少などで開催回数の議論はあったが、形式を変えてもっと呼びかけていこうということになったため行っていると回答した。
(3)呉市での展開の可能性
議員みずから視察対応をしていただいたことで、議員間で踏み込んだ意見交換ができたため、呉市議会においても議会運営関係の視察については、議員による対応を検討すべきではないか。
予算及び決算審査については、分科会方式では審査のみで結論が出せない、審議日数の増加、全議員が全ての案件に対して審査できないという点から現状の方法でよいと考えるが、予算を全議員で審査していることを踏まえ、決算も全議員で審査することを選択肢の一つとして検討してもよいのではないか。
大分県大分市
(1)調査内容
大分市議会では、議会運営に関する視察の対応を議員が行っている。
大分市は、議会基本条例を制定するに当たり全議員による大分市議会議員政策研究会を設置し、全体会議5回、役員会議12回開催、推進チーム会議21回、市民意見交換会を市内13カ所の公民館で開催、パブリックコメントの実施、各会派での最低3回以上の検討という協議を経て制定された。この議会基本条例には、「自由討議による合意形成」や「議会広報の充実」が盛り込まれている。
委員会での自由討議については、ベテランの委員長と新人の委員長では自由討議の運用が違ってくるため、マニュアル等が必要ではないかと考えているところである。
意見交換会について、平成29年度は市内13地区の公民館で開催し、延べ395人の市民が参加したが、参加者は年々減少している。打開策として、公民館等約600カ所に議員が赴き、ポスター掲示の依頼を行っており、参加人数にはこだわらずに継続し、議会の姿が市民に見えてくれば必然的に参加者ふえるのではないかと考えている。また、参加者が高齢化していることもあり、高校生や大学生など若年層との議会報告会も開催している。
議会改革について、議会運営委員会では活性化の話が出づらいということで、議会の活性化に特化して議論する議会活性化推進会議が設置された。構成員は、正副議長及び会派から選出された1名以上議員となっている。議会運営委員会の下請という扱いではなく、議会運営に関する課題は議会運営委員会、それ以外の個々の課題は議会活性化推進会議議論と区分けし、議論した結果を議会運営委員会に提案するという形態をとっている。
決算審査においては、平成22年9月定例会から、正副議長、議員選出による監査委員を除く全議員が参加できるよう決算審査特別委員会に分科会方式を導入した。その後、議会活性化推進会議において事務事業評価導入に向けた議論があり、平成24年9月定例会から決算審査の一環として、事務事業評価を導入した。なお、審査対象項目は、議会が選定している。
(2)質疑応答
自由討議を行う上で議員の資質向上の方策はあるのかという問いに対し、委員会運営、基本条例を見直しているが、政策的に委員会へどう生かせるかが鍵であり、自然に委員会で自由討議を行えるような仕組みづくりが課題であると回答した。
議員定数の協議については、議会改革=定数削減ではないということを市民に理解してもらうため、大分市では、公開シンポジウム等を開催している。その結果、前回の議員定数協議の際は、自治会組織等から定数削減についての要望は出なかった。議会バッシングがふえている流れの中、市民に信頼してもらうことが大切であるという回答をいただいた。
(3)呉市での展開の可能性
大分市は、「市民目線」を議会全体で意識して行動している。超党派が一丸になることが容易ではない中で、それを実際に行っているところがすばらしく、呉市も見習うべき点である。また、市民と接する機会の確保にも積極的であり、議会報告会の参加人数が減ってきている中で、市民に参加してもらうための工夫について前向きに議論されている。その一つとして、全議員で啓発ティッシュを配り企画の案内を行う、ポスターを貼るという広報活動があり、ベテラン議員も率先してチャレンジしようとするマインドも見習うべき点である。
長崎県長崎市
(1)調査内容
長崎市では、常任委員会の任期を1年、特別委員会の任期は調査終了までとしているが、大半が1年で終了している。常任委員会の任期が1年である理由は、議員全員が全ての委員会を経験するためであり、4年間の任期で全ての委員会を経験することになる。また、特別委員会は1年で終了しても、長期にわたる案件については、形を少しずつ変えながら新しい特別委員会を立ち上げている状況である。
本会議運営上の特徴は、常任委員会での審議・審査を主に考えているため、ほとんど議案質疑が行われていないことである。
予算及び決算の審査方法については、平成11年6月から各常任委員会で審査を行う分割付託方式を採用している。予算の分割付託は、議案一体の原則に反しており、行政実例でも認められていないが、 長所として各常任委員会で詳細に審査ができること、議員全員が審査に参加できること、各常任委員会で一斉に審査できるため期間を短縮できるという理由で他の自治体でも採用されている。これまでも、審査方法については議会内でたびたび議論されているが、詳細な審査や全議員がかかわるには、最終的に分科会方式を取ることになるため、現在と余り変わらないという結論から変更されていない。
議会改革について、長崎市の議会基本条例第4条、第5条、第9条に議員間討議が規定されている。また、本会議での議員間討議は煩雑になることが想定されるため、運用指針により委員会での委員間討議の運用を取り決めている。委員会討議については、議案等の審査において、委員からの申し出があったとき、または委員長が必要であると認めるときに委員間討議を行うものとなっており、討論の前に行っている。平成23年から各委員会において委員間討議を導入し、現在までに20回開催されている。当初は次第書に記載していたこともあり多く行われていたが、全ての案件に対して委員間討議を行わなくてもよいのではないかとの声が上がり、平成28年以降行われていない状況である。議員の中には、委員間討議の開催を希望する議員もいるが、委員長が開催を認めないという現状である。なお、これまでの委員間討議では、委員のそれぞれの思いが主となって論点が絞りこめず、議論が深まらずにまとまりに欠ける結果となるという課題もある。
反問権の導入については、議論を深めるために反問権を導入し、現在までに反問権が発議された例はあるが議論が深まったということはない。
(2)質疑応答
委員外議員の取り扱いについて、委員会は同時開催のため委員外議員はいない。また、決算審議では総務委員会に執行部が集中するため、3委員会を休止にしているが、委員外議員の発言はないとのことだった。
(3)呉市での展開の可能性
各常任委員会において予算・決算審査が行なわれる長崎市の分割付託方式では、全議員が任期中に全ての委員会にかかわることでき、内容を理解することができるため参考にすべきである。また、導入する場合には開催時期を見直す必要があると考える。
自由討議については、呉市が昨年行った議員研修での講義において、活発な議論を生むためには議員の意見をテーマ別に絞り、それぞれを議論していくべきであるということであった。長崎市議会では執行部が同席して討議しているため、テーマを絞って議員間での活発な議論を行うことが難しいのではないかと思われる。そのため、討議を活発にする手法として、各委員会で勉強会を開催し、自由討論を行うのも一つの方法であると考える。