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令和元年度 産業建設委員会行政視察報告

期日

令和元年10月8日(火曜日)~10日(木曜日)

視察委員

福永高美(委員長)、林田浩秋(副委員長)、檜垣美良、沖田範彦、光宗等、加藤忠二、井手畑隆政、土井正純

視察都市

月   日 視 察 先 調 査 事 項
 
10月8日(火曜日) 埼玉県草加市 空き家・空き店舗の活用について
10月9日(水曜日) 滋賀県長浜市
10月10日(木曜日) 岐阜県岐阜市

視察目的

 本市の市街地では、商店街などの商業地域の活力低下が進む中、商業の活性化、にぎわいの創出に向けた空き店舗の有効活用が必要となっている。また、島嶼部地域では、商店の廃業などによる市民生活への影響を最小限に食い止める必要がある。
 こうした中、本市ではこれまで、意欲ある新規出店者から魅力的な事業案を公募するなどの取り組みを行ってきたが、今後は、空き家や空き店舗等の遊休不動産を、付加価値をつけ新しく再生・活用し、地域の課題を解決していく「リノベーションまちづくり」事業に取り組んでいくこととしている。
 そのようなことから、本委員会では「空き家・空き店舗の活用について」を所管事務調査のテーマとして調査研究することとし、先進自治体の取り組みを参考とするため、視察を行った。

埼玉県草加市

(1)調査内容

 草加市は、昭和30年代頃から人口が伸び続け、東京のベッドタウンとして繁栄してきたが、その反面、市民間・世代間・市民と学生におけるコミュニティーの不足や都市型産業の不足などから「寝に帰るだけのまち」といった課題があった。
 それらを解決するため、平成27年度より、草加駅東口周辺において、空き家や空き店舗といった遊休不動産を利活用することで、住民のコミュニティーの活性化や都市型産業の集積など、まちの地域経営課題を解決していくリノベーションまちづくりを進めており、この取り組みの一環として、実際の空き家などを題材に、市内外から集まった参加者達がチームを組み、建物の再生だけでなく、周辺エリアの価値をどのようにして上げ、再生させるかの利活用事業計画を作成し、不動産オーナーへ提案するリノベーションスクールを開催している。また、このリノベーションまちづくりの取り組みの目的や進め方についての戦略的な都市政策計画として「そうかリノベーションまちづくり構想」を平成29年に策定している。
 このリノベーションまちづくりに取り組むことになった経緯として、当初は中心市街地活性化法に基づく、ハード整備などを模索していたが、ハードよりもコンテンツ創出が重要であると考え、コンテンツ創出の具体的手法を検討する中、補助金に頼らず、民間主導・行政支援によるリノベーションまちづくりが福岡県北九州市などで成功事例となっていたこと、また、過去にも民間主導でのまちづくりが行われた歴史もあり、同時に古くからまちづくりに関わる市民からも、この手法の活用の提案があったことから、リノベーションまちづくりを取り組むこととなった。
 これらの取り組みにより、過去2回のリノベーションスクールでは、7件が事業化したほか、波及効果として、不動産オーナーにより、これまで店舗ではなかったところに新たに創出されたコンテンツが合わせて8件事業化しており、今後はこの手法を市内のほかのエリアへ拡大させようとしている。
 また、そうかリノベーションまちづくり構想を実現するためには、行政側からではなく、民間側から気運の醸成や家守社の育成を行う組織が必要だということで、構想検討委員会の委員を中心に、そうかリノベーションまちづくり協議会が平成28年5月に結成された。協議会は、家守部会、不動産部会、建築部会、金融部会、学生連携部会で構成され、市と連携して、民間の立場から家守会社の相互成長、家守会社に対する物件供給や地域連携、金融支援等の実践・検討を進めていた。
 そのほか、マネジメント型まちづくりファンドの組成などの環境整備、自分の得意や長所を生かして月に3万円稼ぐビジネスである女性創業支援プログラム「3ビズ」にも取り組んでいた。

(2)質疑応答

 行政側の組織体制、家守会社の設立経緯と具体的な事業内容、リノベーション物件の探し方や取り扱い方、立地適正化計画とリノベーションまちづくり事業との整合性などについて質疑が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 リノベーションまちづくり推進係という組織をつくり、専従の職員を配置して取り組んでいたが、本市がリノベーションまちづくりを進めていくのであれば、職員の採用方法、職員研修の予算確保、部局間の連携など、当局の支援体制が重要になってくるのではないだろうか。
 また、補助金に頼らない民間主導によるまちづくりの考え方、公共空間の活用方法については、今後の当市における施策展開を考える上で大変参考になった。

滋賀県長浜市

(1)調査内容

 長浜市の中心市街地は、昭和40年代に大規模集客施設が相次ぎ出店され、昭和50年代までは繁栄していたが、昭和60年代に入ると車社会になり、大規模小売店舗の郊外出店が始まり、地元客が郊外に流れ、中心市街地から人が姿を消し始めるとともに、歴史的な人口・商業集積地域が徐々に衰退していった。
 そうした中、平成元年からの黒壁を中心としたまちづくりを発端とし、地域資源である町家を活用したプロジェクトが実施された。
 また、平成21年からは、国認定の中心市街地活性化基本計画に基づき、複数のまちづくり会社によって、まちなか再生プロジェクトが実施された。
 そのような取り組みの結果、多くの観光客が訪れる観光都市として発展してきたが、10年経過した現在、観光客は訪れているものの、空き家の急増、後継者の不在による空き店舗の増加、住み手の減少といった新たな課題が顕在化し、まちの魅力が失われつつあることから、平成30年度から町家を活用したエリアリノベーション事業に取り組んでいる。

(2)質疑応答

 外国人観光客の割合と宿泊施設の受け入れ体制、琵琶湖を活用した観光施策、商店街のニーズに対応した支援措置の内容と予算、中心市街地エリア内のトータルタウンマネジメントや行政と民間事業者との調整を行う長浜まちづくり株式会社の構成や事業内容と収益、中心市街地活性化法との関連性などについて質疑が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

 民間会社のまちづくり会社にまちづくりのトータルコーディネートを委託していたが、民間主導でまちづくりを推進する仕組みは今後の参考になると考えられる。
 また、エリアを絞り、重点的にまちの特性に合ったまちづくりに取り組むエリアリノベーション事業も、空き家・空き店舗対策の一つの手法ではないかと感じた。

岐阜県岐阜市

(1)調査内容

 岐阜市は平成19年に岐阜市中心市街地活性化計画を策定し、1期計画及び2期計画では、にぎわいの創出とまちなか居住の推進に取り組んできた。
 3期目となる計画では、岐阜市の顔である柳ケ瀬を次世代につながる新しい魅力が集積した商いの場として再生することで、岐阜駅周辺、岐阜大学跡地周辺を含めた中心市街地全体を民間投資が起こる持続可能なまちとし、将来の岐阜市を支え、牽引する役割を発揮していくことを目指している。
 その計画の一つの方針である、まちの魅力となるコンテンツの創出として、民間の創意工夫のもと、短期的に複数の事業を展開することでエリアを活性化させるリノベーションまちづくりは、柳ケ瀬を商業地として再生させる可能性を持っていることから、リノベーションを活用した新たな商業担い手の創出に取り組んでいる。

(2)質疑応答

 まちなか住居支援事業の内容、ハード・ソフト事業を担当する部局間の連携、第3期岐阜市中心市街地活性化基本計画の進捗状況、リノベーションスクール開催後のアフターフォロー、まちづくり会社の設立経緯や収支状況、市が行う取り組みの周知方法などについて質疑が行われた。

(3)呉市での展開の可能性

  リノベーションまちづくりと並行して空き店舗活用事業に取り組んでおり、支援体制のあり方は今後の議論の参考になった。
 また、行政と民間をつなぐ中間支援組織のまちづくり会社は、中心市街地を活性化させる連携体制が非常に機能しており、参考になった。